一人暮らしをしていたことで誰にも看取られず、その死を親族・隣人に気づいてもらえない。これが近年社会問題となっている「孤独死」です。発見が遅れたご遺体の処理は自力では行えません。そこで依頼するのが特殊清掃業者です。
この記事を監修した人
- 小西 清香氏
- 整理収納アドバイザー
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。夫の身内6人の看取りや介護をし、生前整理の大切さを痛感。
また看護師時代ICUに勤務し、人の最期もたくさん見てきました。
そんな経験を元に元気なうちから生前整理を!という思いで、片付けと合わせてお伝えしています。
孤独死と特殊清掃業者の役割
人体は死亡後1時間程度で消化器官がやわらかくなり、その後急速に腐敗を始めます。本来であれば適切な処置により告別式・火葬まで生前の姿のままで安置されますが、孤独死の場合は遺体はそのまま腐敗を続け、最終的には溶けたようにドロドロの状態になってしまいます。ご自身の親しい方がこのような状態で発見されることは精神的に多大なダメージを与えることはもちろん、部屋に漂う悪臭や害虫により健康被害も懸念されます。
そこでご自身に代わって専門技術と知識の下適切な処置を行ってくれるのが特殊清掃業者です。
特殊清掃業者と事件現場特殊清掃士とは?
特殊清掃とは孤独死や自殺現場など死体の腐敗によってダメージを受けた住宅・施設の清掃を行う技術のこと。それを専門に承っているのが特殊清掃業者です。
特殊清掃業者の主な仕事は大きく分けて「長期に渡って空き家となっているゴミ屋敷の片付け」「孤独死現場の片付け」の2種。ご親族だけではなく、一般の清掃業者でも手を出せない現場を専門知識と技術で適切に原状回復する仕事です。近年の孤独死の増加により、その需要が年々高まっている業種でもあります。
また、特殊清掃業者のスタッフは「事件現場特殊清掃士」とも呼ばれます。これは一般社団法人 事件現場特殊清掃センターが認定している民間資格の有資格者を指します。
特殊清掃業の専門家「事件現場特殊清掃士」に依頼する理由
孤独死の現場に一般の方が立ち入るのは危険です。近しい方の変わり果てた姿を目にする精神的ショックだけではなく、感染症に罹患する恐れがあるからです。
漏れ出した腐敗液や血液は雑菌・ウイルスの温床。発生した害虫がそれらの菌を部屋の隅々まで運ぶことで部屋全体が汚染された状態であると考えれば、何の知識も持たず、準備もままならない状態で踏み込むことがいかに危険かお分かりいただけるのではないでしょうか。そこで特殊清掃業者と在籍している事件現場特殊清掃士の出番となります。
自分ではどうしようもできないことを適切な手段で対処してくれることが特殊清掃業者に依頼する最大の理由です。
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特殊清掃の作業内容
特殊清掃の作業を行うにあたり、専門家として必要な心構えが二つあります。
一つ目は「自己防衛」、感染症にかからない・広めないために防護服・ゴーグルで完全防備。その他にも現場で起こり得るすべてのリスクを把握して対策すること。
二つ目は「配慮」でご依頼主様はもちろん、害虫や死臭の漏洩によるご近所への被害の防止など、人への配慮を忘れずに作業すること。
以上2点をもとに大まかに以下の作業を行ってくれます。
1.害虫・害獣の駆除
遺体の腐敗に伴って発生する臭気は害虫・害獣を呼び寄せ、天敵のいない室内で仲間を増やしていきます。部屋の中でうごめく数十匹の害虫は見た目のインパクトだけではなく、遺体から発生した病原菌を外に運び出してしまう危険もあるため、部屋から出さないように細心の注意を払いながら駆除を行います。
2.死臭物の排除
ご遺体の発見が遅れた場合は腐敗が進み、漏れ出した体液や汚物が布団やカーペットを通してフローリングの内部まで染み込んで汚染します。これが部屋に漂う死臭の正体です。これは単なる腐敗臭だけではなく、遺体から漏れ出た病原菌のニオイでもあるため、適切に対処する必要があります。
まずは死臭の原因を調査し、その原因を特定します。その後、オゾン脱臭装置や特殊消臭液など専門的な道具で消臭・除菌、床下まで腐敗液が浸透している場合は、フローリングの交換やリフォームも視野に入れて作業を行います。
3.遺品の搬出
発見が遅れた場合は大切なご遺品も菌とニオイが染みついて使い物にならなくなっている場合がほとんどです。こうした品を搬出して適切に処分するのも特殊清掃業者の仕事です。
搬出ルートにニオイが漏れないように厳重に梱包して搬出し、仕上げの除菌・消臭を行います。
特殊清掃業者の選び方とポイント
繰り返しになりますが、孤独死の現場に素人が立ち入るのは非常に危険です。だからこそ作業を依頼する特殊清掃業者には十分すぎるほどにこだわる必要があります。
適切な作業を行ってくれる実績・技術があるか
特殊清掃はその名の通り、特殊な技術を求められる清掃作業です。付け焼刃で対応できる業種ではありません。だからこそ依頼する業者には「滞りなく作業を進められる技術があるか?」「イレギュラーな状況でも柔軟に対応できるだけの経験と実績があるか?」を重視して選ぶ必要があります。
技術と実績は比例するもの。聞きかじったノウハウで表面だけ対処するようないい加減な業者に依頼しないためにも、業者のホームページで実績数や作業年数を確認し、しっかりと比較することが大切です。
料金面
少しでも料金を抑えてお得に作業を行ってもらいたい、と考えるのは当然のことですが、特殊清掃を業者に依頼する際にはその考えは捨てておくことをおすすめします。その理由として以下の3点が挙げられます。
1.多くの人が嫌がる業種であること
人の死に触れ、腐敗した体液を処理する特殊清掃業はまさに究極の3K。精神に傷を負って離職する方も少なくありません。そのためスタッフも少数精鋭で作業を受けざるを得ない状況にあります。すなわち人件費を削減することが難しい業種なのです。
2.専門技術だからこそ
需要が高まり続ける特殊清掃業を少数の経験豊富な作業スタッフで回しているうえに、使用する機材や薬品も特殊清掃専用の高価なものを使用するため、1回の作業料金も決して安くありません。
3.遺品の処分料
不用品回収業であれば利用価値のある不用品を買い取って再販することができますが、死臭が染みついた中古品となるとそういう訳にはいきません。回収したものは全て処分する必要があります。加えて、その処分料も年々高騰しつつあります。
初めて業者に特殊清掃を依頼した際、値段に驚く方も多いと聞きますが、自分ではどうしようもならないことを専門家に専門技術を用いる作業を依頼する以上は、作業料金にはある程度覚悟しておき、確実に作業してもらうことをおすすめします。
悪質な業者につかまらないために
こちらの足元を見て法外な作業金額を請求したり、作業に手抜きをされて完璧な消臭が出来ていなかったりと悪質な業者も存在しています。
そのような業者にうっかり依頼してしまうことを防ぐために、「対応範囲を確認する」「料金の内訳を確認する」ことの以上2点をよく確認することを徹底するようにしてください。
1.対応範囲の確認
「特殊清掃承ります」の文言だけを頼りに依頼すると「消臭・除菌はしてくれるが家具はそのまま」「不用品回収業者のオプション作業のため、専門家の作業ではない」といった中途半端な結果に終わることもあります。そのため、どこまでの作業を承ってくれるか、すなわち対応範囲をしっかりと確認したうえで依頼する必要があります。
2.料金の内訳の確認
見積書を出してもらったら料金の内訳を確認しましょう。見積書の良し悪しでその業者のレベルが判断できると言っても過言ではありません。「総額」で計算されていなかったり(後に追加料金が発生することがある)、相場よりも値段が高くなっていないかなど、提示された料金におかしな点はないか、よく見ておきましょう。比較のために2~3社から相見積もりを取るのもおすすめです。
特殊清掃は急を要する作業ではありますが、安心して任せるために必要なことです。以上の2点を必ず行うようにしてください。
まとめ
特殊清掃は文字通り特殊な技術を要求される作業です。決してご自身で対処しようとせず、専門家である特殊清掃業者に依頼するようにしてください。
業者を選ぶ際には【適切な作業を行ってくれる実績・技術があるか】【料金は適切な値段か】に留意しながら慎重に選ぶことを心がけ、その業者が本当に信頼できるかどうかをじっくりと吟味することも忘れないように気を付けてください。