家族や親族が亡くなり、死亡届の提出や葬儀、健康保険証の返納を終わらせると、次は故人の遺品整理を始めなければなりません。
しかし、大切な人を失った悲しみを抱えたまま始めても対応しきれない可能性も考えられます。
そこで、今回は、遺品整理はいつから始めればいいのか、適切な時期について詳しく紹介します。
この記事を監修した人
- 小西 清香氏
- 整理収納アドバイザー
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。夫の身内6人の看取りや介護をし、生前整理の大切さを痛感。
また看護師時代ICUに勤務し、人の最期もたくさん見てきました。
そんな経験を元に元気なうちから生前整理を!という思いで、片付けと合わせてお伝えしています。
遺品整理はいつから始めればいい?
結論から言いますと、遺品整理を開始する最適な時期には、明確な規定はありません。
典型的なケースでは、葬儀や法要の段取りが整った場合や、遺族の感情が落ち着いてきた時期など、時間的および精神的な余裕が生まれる時点で始めるのが一般的です。
ただし、個々の状況や感情に応じて、自身に適した時期を見極め、冷静な状態で取り組むことが重要です。
しかし、期間が決まっていないからといって遺品整理を先延ばしにすると、思わぬトラブルに直面することがあります。
特に相続税の納税には、死亡事実を知った日の翌日から10カ月以内に手続きをする必要があり、遅れるとペナルティが課される可能性があります。
そのため、自身のペースや感情だけでなく、法的な制約や期限も考慮して、適切な時期に遺品整理を始めることが重要です。
遺品整理を始める目安は?
遺品整理をいつ始めるべきか悩んでいる方へ、適切な時期と具体的な手順を、一般的に推奨される順番でご紹介します。
遺品整理を始める適切なタイミング
1.四十九日の法要で親族が集まったとき(亡くなって49日後~)
2.葬儀の翌日から四十九日にかけて(亡くなって3日後~49日の間)
3.社会保険や公共料金の解約などの手続きをしたあと(亡くなって14日後~)
4.葬儀後(亡くなって3日後~)
5.相続税の申告前(亡くなって10カ月以内)
四十九日の法要で親族が集まったとき(亡くなって49日後~)
親族が集まりやすい時期で、遺品整理や形見分けについて相談しやすいです。
四十九日とは、その名の通り故人が亡くなってから49日間のことを指します
これは仏教の考え方に基づいており、死後、故人が極楽浄土に入れるかどうかの裁判が49日間にわたって行われるとされています。
故人が成仏できるように、初七日(死後7日目)と四十九日(最終日)に法要を行い、丁寧に弔います。
この期間中、親族が集まる機会が増えるため、遺品整理や形見分けについて相談する良い機会となります。
他の遺族の了承を得ずに、勝手に遺品整理を始めるのは絶対に避けましょう。
他の親族や相続人にとって重要な物かもしれない物を自己判断で処分・売却してしまうと、トラブルの原因となります。
相続に関するトラブルを未然に防ぐためにも、親族全員で話し合い、納得のいく形見分けを行うことが大切です。
葬儀の翌日から四十九日にかけて(亡くなって3日後~49日の間)
落ち着いて整理を始めるのに適した期間です。
葬儀が終わった直後から少しずつ進めることができます。
四十九日に親族が集まり、形見分けや相談をしながら遺品整理を始める場合、故人と同居していたご遺族ならば葬儀が終わった翌日から整理作業を開始することも考えられます。
この方法では、ある程度は自分のペースで進めることができる時間的な余裕があります。
ただし、ここで重要なのは、他の遺族の了承を得ないまま決して遺品を持ち帰ったり、処分や売却したりしないことです。
繰り返し申し上げますが、親族間でのトラブルの原因となりますので避けましょう。
自分で少しずつでも進めておこうと考えている人は、収納棚の整頓や希少品の捜索など、あくまでも基本的な仕分け・整理作業だけに留めておいてください。
四十九日に親族が集まってから本格的な相談がスムーズに進むよう準備しておくことが重要です。
社会保険や公共料金の解約などの手続きをしたあと(亡くなって14日後~)
必要な手続きを済ませてから整理を始めることで、後のトラブルを防げます。
亡くなると、さまざまな手続きを迅速に行う必要があります。
まず、死亡届の提出や健康保険証の返納といった基本的な手続きから始めます。
その後、生前に利用していた公共料金(水道代やガス料金など)の解約も不可欠です。
解約のタイミングは、公共料金の締め日に合わせて行うとスムーズです。
さらに、年金の受給停止手続きやクレジットカードの利用停止手続きなども忘れてはなりません。
また、最近ではサブスクリプションサービスを利用している人も多いため、これらの解約も忘れずに行います。
まずは、支払い期限や受給日が決まっている重要なものから順に、手続きを進めましょう。
遺品整理を早めに始めることで、不要な支出を避けることができます。
故人の手続き関連を親族で確認し、解約手続きを済ませたあとに遺品整理に取り掛かるのも良いでしょう。
葬儀後(亡くなって3日後~)
葬儀後すぐに始めることで、早めに整理を終わらせたい方には適しています。
故人の遺品整理は、現世での心残りを取り除き、安心して来世へと旅立つお手伝いをする大切な行為です。
故人が賃貸マンションやアパートを借りており、次月の家賃を支払う前に退去したい場合、早めに遺品整理を始めることが推奨されます。
また、親族の多くが遠方に住んでおり、集まる機会が少ない場合でも、葬儀や告別式の間に遺品整理や形見分けを進めることが一般的です。
相続に関するトラブルを未然に防ぐためにも、葬儀や告別式の合間に、親族と遺品整理について雑談しながら話し合うのも良いでしょう。
葬儀後は慌ただしい時期かもしれませんが、親族が集まれるタイミングを活用して遺品整理を進めることが重要です。
遺品整理は単なる物の整理だけでなく、故人の思い出や遺志を尊重し、その人生をしっかりと締めくくる儀式的な役割も担っています。
故人の生前の姿を振り返り、感謝と共に心を整えることができる貴重な機会です。
限られた期間内で急いで遺品整理をしなければならない場合は、遺品整理業者への依頼も検討してください。
業者に頼むことで、遺品の仕分けや処理といった手間のかかる作業を代行してもらえます。
慌ただしい状況でも、遺族は心の整理に集中できるため、業者の利用をおすすめします。
相続税の申告前(亡くなって10カ月以内)
相続税の申告期限に間に合うように、遺産の評価や整理を進める必要があります。
遺品整理を相続税の申告前に行うことで、故人の財産や資産を正確に把握できます。
これにより、相続財産の規模や内容が明確になり、相続税の申告書を正確に作成することができます。
早めの遺品整理作業は、税務上のトラブルを避けるために重要です。
相続税とは
相続税とは遺産を相続する際に課される税金のことです。
死亡の事実を知った翌日から10カ月以内に申告・納税を行うよう義務付けられており、故人の財産が相続税の非課税額を超える場合は、税務署に申告書を提出する必要があります。
遺品整理に集中しているうちに納税期限を過ぎてしまうことがあるため、注意が必要です。
また、財産だけでなく貴金属、骨董品、絵画なども課税対象になることがありますので、見落とさないように気をつけましょう。
遺産の総額が相続税の基礎控除を下回る場合は相続税はかかりませんが、基礎控除を超えている場合、10カ月を過ぎると控除を受けられなくなるだけでなく、以下のペナルティが課される可能性があります。
●無申告加算税
申告日までに申告書を提出しなかった場合に課される税金です。
税務調査で申告漏れを指摘されたあとに申告した場合、相続税が50万円までなら税率15%、50万円を超える場合は20%の無申告加算税が課されます。
ただし、申告期限を過ぎていても、税務調査を受ける前に自主的に申告した場合は、税率が相続税額の5%に軽減されます。
●延滞税
期限までに相続税の納税が行われなかった場合にかかる税金で、納税期限の翌日から納税が完了する日までの期間に応じて課税されます。
申告期限から2カ月経過すると、課税率が増加するため、早めに対処することが重要です。
*参考サイト:財務相「身近な税「Q&A ~身近な税について調べる~」
遺品整理の時期を決める際の注意点
支払いが発生する賃貸契約、月額サービス、そして相続税の申告は、遺品整理の時期を決めるうえで重要な要素です。
それぞれについて詳しく解説します。
急を要するケースもある
遺品整理は、ご自身にあったタイミングで始めるのが最適ですが、例外もあります。
例えば、孤独死などで遺体の発見が遅れて部屋が汚損されている場合や、故人が暮らしていた賃貸物件の契約更新の予定がない場合には、作業を急ぐ必要があります。
前者の場合、悪臭や害虫の拡散による周囲への二次被害を防ぐために早急な対応が求められます。
後者の場合、誰も住んでいない家の家賃を支払い続けることを避けるため、迅速な行動が必要です。
総合して、ご自身や周囲の人々が不利益を被る可能性がある場合には、遺品整理を急ぐ必要があると言えます。
賃貸物件は家賃の支払い時期に注意する
賃貸物件で遺品整理を行う場合は、できるだけ翌月の家賃が発生する前に終了させることをおすすめします。
賃貸物件は月極契約がほとんどのため、荷物を放置しているだけでも家賃が発生してしまいます。
賃貸契約書を確認して家賃や契約期間を把握し、翌月の家賃が発生しないうちに退去することを目指しましょう。
しかし、もし借主が月の半ば以降に亡くなってしまった場合は、無理に当月中に退去しようとする必要はありません。
余裕を持って葬儀や遺品整理を終わらせるために次月分の家賃を支払い、故人を弔う準備を優先するのが良いでしょう。
また賃貸物件では原状回復料金が求められることがあり、状況によっては高額なクリーニング代金が相続人に請求される場合があります。
さらに、借主がエアコンなどの家電を設置していた場合には、それを取り外すための工事・廃棄費用も支払わなければならないことがあります。
空き家になる場合の注意点
配偶者・家族など、故人と同居していた方がいて、数部屋分の遺品整理だけが必要な場合はその限りではありませんが、故人が一人暮らしで家が空き家になる場合は、その家が「特定空家」に指定されないよう、物件の取り扱いについても考える必要があります。
特定空家とは
空き家をそのまま放置した場合に、以下のいずれかに当てはまる物件を指します。
・倒壊の恐れがある
・衛生上有害となる恐れがある
・管理が行われていないことにより著しく景観を損なう状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
特定空家に指定されるデメリット
物件が特定空家に指定されると、自治体から指導・助言・勧告が行われ、それでも改善されない場合には50万円以下の過料が発生します。
さらに、勧告後は優遇措置の対象外となることで固定資産税が最大6倍に跳ね上がる可能性があります。
遺品整理を行う際には、家の中の品物の処理にばかり気を取られがちですが、家そのものにも目を向け、適切な整理を行えるように開始時期を逆算して考える必要があります。
*参考サイト:国土交通省『空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報』
月額・年額サービスは更新日に注意する
遺品整理中に見覚えのないサービスの契約書が見つかり、気づかないうちに年間契約が更新されていたため、予想外の出費が発生することがあります。
契約者本人が亡くなっていることを伝えれば更新をキャンセルしてくれる場合もありますが、すべての企業が対応してくれるとは限りません。
月額や年額のサービス契約は、多くの場合自動更新される仕組みになっています。
これにより、サービスを利用していなくても、契約が続いている限り料金が発生し続けます。
特に年間契約の場合、一度更新されると解約が困難になり、年間の支払いが一括で請求されることがあります。
契約を解除する際には、故人の死亡証明書や戸籍謄本などの書類が必要になる場合があります。
さらに、サービスによっては、契約者本人以外が解約手続きを行う際に特別な手続きが必要な場合もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
ご遺族で確認することが難しい場合は、遺品整理業者に依頼するのも一つの方法です。
遺品整理業者は経験豊富で、さまざまなサービスの解約手続きに精通しているため、スムーズに対応してくれます。
相続税は申告期限に注意する
故人の遺産の総額が相続税の基礎控除額を上回っている場合、相続税の申告が必要です。
申告手続きは、亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内に行わなければなりません。
この期限を過ぎてしまうと、相続税の控除を受けられず、延滞税が課される可能性があります。
申告に際しては、遺産の総額を正確に把握することが重要です。
不動産、預貯金、株式、保険金など、すべての資産を含めて評価しなければなりません。
また、故人の負債や葬儀費用なども控除対象となりますので、これらも正確に計上することが求められます。
相続税の申告は、専門知識を要する複雑な手続きです。
場合によっては、税理士などの専門家に相談することを検討しましょう。
専門家の助けを借りることで、手続きがスムーズに進み、期限内に正確に申告を行うことができます。
相続を放棄する場合の手続き
財産を相続すると、土地や物件などプラスの財産だけではなく、借金などの返済義務なども同時に引き継がれることになります。
そのため、故人が多額の借金を抱えていた場合には、「相続放棄」も検討しましょう。
相続放棄をすることで、財産の受け取りを一切放棄する代わりに、借金などマイナスの財産も引き継がなくなります。
相続放棄を決めた場合、自分が故人の相続人であると知ったときから3カ月以内に家庭裁判所に対して相続放棄の手続きをする必要があります。
この期間を過ぎてしまうと、財産と借金の相続を承認したことになります。
しかし、期限を過ぎてしまった場合でも、家庭裁判所に申し立てを行い、内容が認められれば相続放棄が可能になるケースもあります。
期限を過ぎたからといってすぐに諦めず、冷静に対処することが大切です。
相続放棄の手続きには、申立書の提出や必要書類の準備などが含まれます。
必要な書類には、戸籍謄本や遺産目録、借金の明細などがあり、これらを早めに揃えておくことが重要です。
手続きの詳細については、家庭裁判所や弁護士に相談すると良いでしょう。
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遺品を放置したままだとトラブルに巻き込まれる可能性も
故人が生前に一人暮らしをしており、誰も住む人がいなくなってしまった場合、空き家の管理を怠るとさまざまなトラブルに巻き込まれる可能性があります。
以下のようなトラブルを防止するため、空き家の管理を厳重に行いましょう。
火災のリスク
ガスや電気が使える状態で家具や家電を放置していると、電気ケーブルや家電の故障による発火、または自然発火が原因で火災が発生する恐れがあります。
空き家から火災が発生し、近隣に被害を与えた場合、相続人が損害賠償を負うことになります。
このようなリスクを避けるためには、なるべく早めに水道、電気、ガスの使用停止手続きを行い、自然発火の原因となりそうな遺品や老朽化した電気機器を適切に処分することが重要です。
また、年に数回しか訪れない空き家でも、定期的な点検やメンテナンスを怠らず行うことで、安全性を確保する努力が必要です。
倒壊のリスク
第3章でも触れましたが、空き家を放置すると倒壊の危険性が高まります。
人が住んでいない家は老朽化しやすく、特に空き家はその進行が早いと言われています。
放置された空き家は日々劣化し、強風や小さな地震でも耐えられずに倒壊することがあります。
倒壊すると周囲の住民や通行人に多大な被害を及ぼす可能性がありますので、定期的な点検とメンテナンスを行い、必要に応じて補修や解体を検討しましょう。
適切な管理の重要性
空き家の管理は、火災や犯罪、倒壊などのリスクを防ぐために非常に重要です。
故人の遺品整理が終わったあとも、家の管理を怠らないようにしましょう。
管理が難しい場合は、専門の管理サービスを利用することも一つの方法です。
管理サービスでは、定期的な点検やメンテナンスの実施、安全対策の強化、必要に応じた修繕や解体の提案などを行います。
適切な管理を行うことで、トラブルを未然に防ぎ、空き家の安全を確保することができます。
空き家の所有者や相続人は、責任を持って適切な管理を行うことが求められます。
遺品整理の専門業者でも対応している場合がありますので、相談してみると良いでしょう。
空き家の管理は、火災や犯罪、倒壊などのリスクを防ぐために非常に重要です。
故人の遺品整理が終わったあとも、家の管理を怠らないようにしましょう。
管理が難しい場合は、専門の管理サービスを利用することも一つの方法です。
管理サービスでは、定期的な点検やメンテナンスの実施、安全対策の強化、必要に応じた修繕や解体の提案などを行います。
適切な管理を行うことで、トラブルを未然に防ぎ、空き家の安全を確保することができます。
空き家の所有者や相続人は、責任を持って適切な管理を行うことが求められます。
遺品整理の専門業者でも対応している場合がありますので、相談してみると良いでしょう。
まとめ
遺品整理の開始時期に悩んでいる方へ、適切な時期と具体的な手順をご紹介しました。
遺品整理を始める適切なタイミング
1.四十九日の法要で親族が集まったとき(亡くなって49日後~)
2.葬儀の翌日から四十九日にかけて(亡くなって3日後~49日の間)
3.社会保険や公共料金の解約などの手続きをしたあと(亡くなって14日後~)
4.葬儀後(亡くなって3日後~)
5.相続税の申告前(亡くなって10カ月以内)
一般的に推奨される順番はありますが、一番大切なのは、ご遺族が遺品を片付ける決心をしているかどうかです。
まずは故人を偲んで気持ちを落ち着かせ、ゆっくりと遺品の整理を行ってください。
また、一軒家など広範囲にわたる整理が難しい場合や、専門家のサポートやアドバイスを求めたい場合は、遺品整理業者に依頼することも検討してみましょう。
自分たちで進める場合と業者に依頼する場合、それぞれのメリットやデメリットについては、以下の記事にまとめていますので、ぜひ参考にしてください。