生前整理をしたいと考えていても、その意思をご両親に伝えるタイミングはなかなか掴みにくいと思います。
筆者も母親へ生前整理を提案したものの、「早くいなくなってほしいから私物の破棄を強いられている」と誤解されてしまい、同意を得られないまま身辺整理が全く進んでいない状況に悩んでいました。
しかし、言い出せないまま大量の物を放置していると、ご両親が亡くなった後に遺品整理の負担が大きくなってしまいます。
今回は後悔のない片付けが達成できるよう、実家の片付け方やご両親を説得する方法についてまとめました。
この記事を監修した人
- 小西 清香氏
- 整理収納アドバイザー
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。夫の身内6人の看取りや介護をし、生前整理の大切さを痛感。
また看護師時代ICUに勤務し、人の最期もたくさん見てきました。
そんな経験を元に元気なうちから生前整理を!という思いで、片付けと合わせてお伝えしています。
実家の片付はどのタイミングで行う?
実家の片付けは大きく分けて、①生前に行う「生前整理」と②亡くなった後に行う「遺品整理」に分けられます。
生前整理と遺品整理のタイミングですが、特に決まりはありません。
ですが、実家に帰省したときに死後について話し合いをするときや、ご両親が亡くなり親族が集合したときに行うのが一般的でしょう。
亡くなる前に行う『生前整理』
ご両親の意向を聞きながら一緒に物を整理します。
本人の確認を取りながら片付けられるため悔いのない処分ができますが、長年愛用していた物を手放す決断がなかなかできず、作業が進まない場合もあります。
処分を焦る必要は全くありません。
愛着のある物を処分するには時間がかかるものだと受け入れ、無理に処分を促さないようにしましょう。
亡くなった後の『遺品整理』
亡くなられた後の遺品整理では、遺言に従ってご自身の手で遺品を整理しなければいけません。
遺品整理中に思わぬ負債や契約書が見つかり手続きをしなければならなくなったり、遺産相続について親族とトラブルになったりすることもあります。
また、遠方から実家に帰省して遺品整理を行う場合は、滞在期間中に整理を終えなくてはならないため時間との戦いになります。
実家の片付けにはどれくらいの日にちが必要?
実家の片付けにかかる日数ですが、部屋の数や広さ、所有品の量によって異なります。
事前に生前整理を済ませていたご家庭であれば3カ月程度で終了する場合もありますし、何も準備していないご家庭であれば1年以上かかる場合もあります。
また、片付けを手伝ってくれる家族や親族の人数も作業日数に影響するでしょう。
実家の片付けをなるべく早く終わらせるコツ
片付けにかかる時間をなるべく短縮したい場合は、捨てる物の基準を決めたり、住んでいる人数を考慮しながら片付けると効率的に進みます。
捨てる物の基準を決める
タンスに保管されていた物は貴重品を除いて全部捨てる、本棚に入りきらない本はすべて捨てるなど、捨てる基準を明確に決めておくと効率的に片付けが進められます。
特に家族と協力して片付ける場合は、あらかじめ基準を決めておけば毎回捨てるかどうかを確認する手間が省けます。
住んでいる人数分の物を残して捨てる
親御さんがお一人で住んでいる場合は、大量の食器や布団を残しておいても使用する機会はありません。
実家に住んでいる人数を目安にして物を捨てれば本当に必要な物だけを手元に残せます。
片付け後はすぐに物を取り出しやすい環境で生活できます。
実家を片付けるメリットとは?
身辺整理はまだ先の話だから大丈夫だろうと考えていらっしゃる方が多いかもしれません。
ですが、実家にある品々を早めに片付けると老後の生活においてあらゆる好影響をもたらしてくれるのです。
怪我や事故を防止できる
所有物を片付けて部屋がスッキリすると、転倒事故を防止できます。
年齢を重ねると足が上がらなくなり、小さな段差でも躓いて怪我をしてしまうことがあります。
普段の歩行だけでなく、地震や洪水などの自然災害が発生したときに棚の上や廊下に物が積み上がっていると、崩れての下敷きになることも考えられます。
実家の整理は、より安全な暮らしをもたらします。
介護に必要なスペースを確保できる
将来、ご両親を介護するときに介護用ベッドやトイレを設置する可能性があるかもしれません。
すぐにでも要介護者が住みやすい環境を作るために、物を置いたりリフォームするスペースを作っておくことは将来の備えとして有効です。
緊急時に物が見つけやすくなる
通帳や印鑑など、書類手続きや解約に必要な道具を瞬時に取り出せるようになったり、災害が発生したときに必要最低限な物をすぐに持ち出せるようになります。
緊急時だけでなく、テレビのリモコンや鍵など普段の生活用品も瞬時に見つけやすくなります。
トラブルを起こさず荷物を整理する方法とは?
実家を片付けるときには普段の大掃除とは違い、大切な物を誤って破棄してしまわないよう、一点ずつ確認しなければいけません。
無断で荷物を整理しない
荷物を整理する前に、実家の片付けを始めることを親戚や兄弟に話しておきましょう。
同意を得ないまま荷物の整理に手を付けると貴重品や価値がある物を着服しているのではないかと周りに良くない印象を与えてしまいます。
生命保険の証書、有価証券などは早めにまとめておく
現金や通帳、印鑑、クレジットカード、パスポートや年金手帳などは早めに見つけていつでも取り出せる場所に保管しておきましょう。
生命保険の証書や有価証券などの財産も把握しておき、いつでも手続きが行えるようにしておきます。
借金があることを証明する書類等を見つけておけば、負債を相続せずに済みます。
このように重要な書類が実家の中に残されている可能性があるため、荷物の整理は早めに行うのがおすすめです。
無理に物を捨てようとしない
片付けといえども、無理にすべての物を破棄する必要はありません。
処分を決めかねている日用品や服は一旦段ボール箱などに収納し、倉庫に保管しておきましょう。
実家に住んでいた時の私物を自宅に持ち帰るのも実家の片付けには有効です。
両親に実家の片付けを提案する方法とは?
実家を片付けるためにはご両親の同意が必要になります。
2021年3月に日本財団が人生の最期をどのような場所でどのように迎えたいかについてアンケートを行ったところ、558名のうち8割が人生の最後に家族に負担をかけたくないと回答した結果が発表されました。
参考サイト
【「人生の最期の迎え方に関する全国調査」日本財団】
生前整理を始めるのはまだ早いと考えているご両親でも、話し合いをして家族に負担をかけたくないという気持ちと向き合えば身辺整理を始める決意が固まるかもしれません。
もしご自身から相談を切り出しにくいと感じる場合は、亡くなった後に遺品を整理するのは大変だから、とご自身の都合を直接伝えるのではなく、不要な物を処分してすっきりとした部屋で快適に過ごしてほしい、と伝えてみましょう。
また、ケアハウスなどの施設へ移動するとき、在宅介護が必要になったときなど、生活に変化があったタイミングでご両親を説得すれば同意をもらいやすくなる場合もあります。
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実家の片付けに順番はある?
ご両親の同意を得た場合でも、いきなり私物を次々に片付けてしまうと相手を不快な気持ちにさせてしまうかもしれません。
筆者はまず両親が気分を悪くしないよう、自分が使用していた部屋の片付けから始めることにしました。
自分の部屋から不要な物がなくなってすっきりとした光景を見れば、片付けのメリットも体感でき、モチベーションも上がると考えたためです。
次に両親に喜んでもらえるキッチンや浴室、洗面所など汚れが溜まりやすい場所の片付けを行いました。
水回りのスペースが片付いて広くなることで両親の負担を減らせるだけでなく、将来在宅介護が必要になったときの備えにもなります。
ご自身の部屋や水回りの片付けが終わったあとは、災害が発生したときに素早く非難できるよう避難経路の片付けを進めるのもよいと思います。
2013年3月に国土交通省総合政策局安心生活政策課が発表した「災害時・緊急時に対応した避難経路等のバリアフリー化と情報提供のあり方に関する調査研究」では、東日本大震災の死者のうち半数以上(53.4%)が65歳以上の高齢者だという結果が報告されました。
参考サイト
【「災害時・緊急時に対応した避難経路等のバリアフリー化と情報提供のあり方に関する調査研究」国土交通省総合政策局安心生活政策課】
避難経路を片付けておけば廊下や階段、玄関付近に配置された大型家具や物が倒壊し、経路を塞いでしまう被害を回避できます。
特にご両親が寝たきりの状態や歩行に補助が必要な状態の場合は、搬出経路を塞ぐ恐れがある物を事前に撤去することは非常に重要になるでしょう。
不要な家電や家具の処分方法は?
持ち物の中でも特に処分に困るのが家電や家具など大きい物です。
比較的状態が良い家具や、保証期間がまだ残っている家電は売却や譲渡をして手放せます。
お住まいの近くにあるリサイクルショップを利用するのも一つの方法ですが、地元情報サイトでは不要になった家具の売却、譲渡が行われていることがあります。
ここから引き取り手を募集すれば、処分費用をかけずに片付けられます。
製造から長期間が経過している、引き取り手が見つからない物は廃棄しなければいけません。
不要な家具や家電を処分するには、お住まいの自治体が運営している粗大ゴミ回収サービスを利用しましょう。
大量に処分したい場合は自治体や不用品回収業者に回収を依頼すると便利です。
ただしテレビ、エアコン、冷蔵庫などの家電リサイクル法の対象となる家電は粗大ゴミとしてではなく、小売店や自治体が指定する業者に依頼して回収してもらう必要があります。
回収してもらうためにはリサイクル料金が、自宅まで引き取りに来てもらうためには収集運搬料金が必要になります。
実家が遠方にある場合は早めの整理を
飛行機や新幹線で移動しなければならないほどの場所に実家がある場合、整理は帰省時に少しずつ進めておくことをおすすめします。
実家に住む人がいなくなってしまった場合、家具をそのままにして放置しておくことは住居侵入、火災などの被害に遭う可能性があるため大変危険です。
そのため生活用品はできるだけ早く処分しておくことが望ましいのですが、一日では片付かないほど荷物が残っている場合は仕事を休みながら、あるいは週末に実家に泊まりながら整理を行う必要があります。
例えば土日に片付けのために帰省、平日は仕事のためにUターンするというスケジュールを繰り返していると、かなりの手間と交通費がかかってしまいます。
実家を離れる場合は帰省した際にご自身の部屋だけでも、少しずつコツコツと片付けておきましょう。
計画を立てて交通費用を明瞭にしておくことも大切です。
実家の片付けに疲れてしまったときは?
荷物の整理のために実家とお住まいを往復したり、片付けても物が減らない日々が続いたりすると疲れて、やる気を失ってしまいます。
また、ご両親と考えがあわず、予定よりも物を減らせずにストレスを抱えてしまう場合もあるでしょう。
整理に限界を感じたら、業者への依頼を検討するのも良いかもしれません。
どうやって整理すればいいかわからない場合も豊富な経験と専門知識でアドバイスをしてくれますし、スタッフが荷物の分別や搬出を代行してくれるので体に負担がかかりません。
また、遠方からの依頼に対応している業者も存在しますので、移動に必要な費用や時間を大きく削減できます。
まとめ
実家の片付けは想像以上に大変な作業です。
ご両親にしっかりとした体力や判断能力があるうちに片付けを始めれば、それまでの人生をしっかりと振り返ることができます。
大量の遺品に囲まれて途方に暮れてしまわないよう、今から少しずつ生前整理を始めてみてはいかがでしょうか。
身の回りを整理して不要な物を取り除き、今後の人生をより充実させる下準備をしておきましょう。