エンディングノートとは今までの人生を振り返り、悔いのない最期を迎えるためにご自身についての情報や家族に伝えたいことを記録したノートのことです。主に生前整理と平行して行うことが多いため、終活ノートとも呼ばれます。
まだ終活は早いかなとお考えの方でも、自分や家族の安心のためにエンディングノートの作成は十分にやる価値のあるものです。
今回はエンディングノートに書くべき項目や、注意点についてご紹介させていただきます。
この記事を監修した人
- 小西 清香氏
- 整理収納アドバイザー
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。夫の身内6人の看取りや介護をし、生前整理の大切さを痛感。
また看護師時代ICUに勤務し、人の最期もたくさん見てきました。
そんな経験を元に元気なうちから生前整理を!という思いで、片付けと合わせてお伝えしています。
エンディングノートを準備する
エンディングノートに決められた形式などはありませんので、自分が好きなものや書きやすいものを選びましょう。
普通の大学ノートを使用しても構いませんが、初めから記入項目が印刷されている市販のエンディングノートを使用すればより綿密かつ簡潔に記録をまとめることができます。
書店で販売されている物もあれば、インターネットを利用してダウンロードできるノートも存在しますので、内容を試し読みして気に入ったノートを利用すると良いでしょう。
また、エンディングノートは葬儀社や保険会社から無料で貰えたり、地元の自治体が配布を行っていたりしていることもあります。
最近ではスマートフォンでエンディングノートを作成できるアプリも開発されています。
アプリで作成する場合、記入や内容の変更が簡単で、いつでもどこでも編集できるのが利点です。
しかしご自身が亡くなられるとパソコンやスマートフォンの持ち主以外の方がアプリを閲覧するのは困難になるため、筆者としてはなるべく紙媒体のノートを選ぶことをおすすめします。
書ける項目から埋めていく
エンディングノートの書き方について特に決まりはありません。
ご自身の死後にご家族へ伝えたいことや、自分史、これから叶えたい目標などを自由に書いていただいて大丈夫です。
市販のエンディングノートを使用する場合なら書ける項目から埋めていきましょう。
ご自身の生涯を紙に書き出しながら振り返ることで、今までの人生でやり残したことを洗い出すことができます。
残りの人生をより充実させるためにも、ぜひご自身の軌跡を振り返ってみてください。
エンディングノートに書いておきたい内容の中で、取り組み始めた初期でも比較的書きやすいと思われるものを以下にご紹介します。
自分や家族の基本情報
・氏名
・年齢
・現住所
・本籍地
・血液型
・家族構成
・職場(または学校)
・マイナンバー
・健康保険証番号
・運転免許証番号
・デジタル情報(スマートホンやパソコンのID、パスワードなど)
愛するペットについて
・ペットの名前
・生き物の種類(犬、猫など)
・ペットの生年月日
・食事について(エサの種類、量、頻度など)
・アレルギーの有無(有なら具体的に何が対象か)
・かかりつけの動物病院(連絡先、持病があれば病歴や薬の種類も)
・性格
・好きなこと、苦手なこと
いざという時に役立つ情報は忘れずに
エンディングノートが役立つのはご自身の死後だけとは限りません。
不慮の事故や病気により重体となり意思疎通が困難になった場合にも、自分や家族を助けてくれます。
治療や延命に対しての要望や医療保険などの加入の有無、万が一の事態になった場合の相続のことなどを記載しておけば、ご家族にとっても心強いはずです。
医療
・健康保険証番号
・アレルギーの有無(有なら具体的に何が対象か)
・加入している保険(保険の種類、保険会社名、連絡先)
・延命治療や臓器移植を希望するか否か
・かかりつけの病院(名称、連絡先、主治医など)
・常用している薬
介護
・介護場所の希望
・介護費用の引き落とし口座
相続・財産
・銀行口座の預貯金
・有価証券(株式、債券、手形など)
・生命保険(保険の種類、保険会社名、連絡先)
・不動産
・その他の資産
・ローン、借金
資産だけでなく、ローンや借金も相続財産となりますのでノートに書くことを忘れないようにしてください。
しかし借り主が死亡すると、借金は原則子供が相続することになりますので、なるべくご自身の手で全額返済をすることが賢明です。
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自分の葬儀はどうしたい?
自分の葬儀に対しての希望を書いておくと、ご家族が葬儀の準備を進める参考になります。
葬儀内容
・葬儀規模
・参列してほしい友人の名前、連絡先
・菩提寺(名称、連絡先、宗派など)
・その他(葬儀中にかけてほしい音楽など)
葬儀の準備をするときに特に混乱しやすいのが菩提寺の宗派です。
宗派は血筋によって異なり、同じ仏葬であっても葬儀の方法や揃える仏具が異なります。
エンディングノートに菩提寺の名前や連絡先、必要な仏花や仏具を記載し、正しい葬儀を執り行ってもらえるようにしておきましょう。
納骨方法
お墓を事前に購入された方は、寺院や霊園の住所と連絡先も書いておくと安心です。
最近では樹木葬や散骨など、お墓に入らない葬送方法を選ぶ方も増えています。
納骨以外の供養を希望する場合もエンディングノートを使うとご家族が埋葬方法に悩む必要がなくなります。
遺品整理
ずっと大切にしてる品や趣味の品が、自分の死後にどうなるのか気になるという人は多いようです。
もし希望があれば記載しておきましょう。
・特定の人物へ譲渡(相手の名前、連絡先)
・寄付(寄付先の希望など)
・廃棄処分(「中身を見ずに処分してほしい」「データを削除してほしい」など)
エンディングノートを書く際の注意点
遺言書とは異なる
ご自身の希望を記録するエンディングノートですが、遺言状と違い法的な効力はありません。
エンディングノートに延命措置の有無、納骨法の希望などを記録しても、最終的な判断はご家族が行います。
ご家族以外の特定の人物に遺産を相続させたい、あるいは遺産相続の優先順位に従わない分配をしたいとお考えの場合は、弁護士と相談しながら遺言状を作成する必要があります。
保管場所に注意
エンディングノートにはご自身の個人情報や資産の詳細、親族の住所なども記録します。
悪用される可能性が高い情報が書かれたノートは厳重に保管し、第三者の目に入らないようにしてください。
鍵付きの引き出しや金庫に収納しておくことが一番確実ですが、もしご自身が急に倒れた場合、鍵を持っていないご家族がすぐにノートを取り出せない可能性があります。
家族には事前にエンディングノートの存在を伝え、保管場所についても共有しておきましょう。
流出すると多大な損害をもたらす個人情報は無理に書く必要はありません。
クレジットカードや銀行口座の暗証番号は記入せず、ご家族に引き出しを依頼するときに口頭で伝えるようにしましょう。
まとめ
2021年に一般社団法人 終活協議会が発表した調査結果によると終活をするのにエンディングノートは「必要だと思う」と答えた人が90.1%、家族にエンディングノートを「書いてもらいたい」と答えた人も93.1%と、ほとんどの人がエンディングノートの必要性や重要性を感じているようです。
しかし実際にエンディングノートを「書いている」と回答した人は9.9%であり、必要性を認識しながらも先送りにしている現状がわかります。
筆者はエンディングノートを書き始めるのに「早すぎる」ということはないと考えてます。
コラム中でも何度か触れていますが、元気な状態で天寿を全うできるかどうかは誰にもわかりませんし「今後の人生をより充実したものにするため」ということを目標にすればもっと気軽に始められるのではないでしょうか。
エンディングノートは1ページ目から順番に書く必要も、一気に書き上げる必要もありませんので、どうか難しく考えずとにかく書き始めてほしいと思います。
医療の希望、葬儀の形式など現時点で想像しづらいことは一旦保留し、ご家族へのメッセージから記入を始めてみるのも良いかもしれませんね。
ただしこれらの項目は自分の最後の思いを率直に伝える重要な記録になりますので、十分な時間を確保し、ゆっくりと考えながら書くことが望ましいでしょう。
時とともに自分のおかれた状況や思いは変わっていきます。自分の誕生日やお正月など、節目ごとに見直して必要なら修正していくようにしましょう。
ご家族へ宛てる最後のメッセージとして、悔いのないノート作りを目指してみてください。
参考サイト