耳にすることも増えてきた「終活」という言葉。「生涯を終えるときのために身の回りを整理しておくこと」と、なんとなく意味は分かっているけれど、「具体的に何をするのか分からない」「どこか他人事のように感じている」という人は少なくないのではないでしょうか。
デリケートな問題だと思われがちな終活ですが、実は自分にも周りの人たちにも有益で前向きなものなのです。
ここでは終活をする意味や、具体的な終活のやり方、また終活に不可欠なエンディングノートの書き方などを分かりやすくご紹介します!
この記事を監修した人
- 小西 清香氏
- 整理収納アドバイザー
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。夫の身内6人の看取りや介護をし、生前整理の大切さを痛感。
また看護師時代ICUに勤務し、人の最期もたくさん見てきました。
そんな経験を元に元気なうちから生前整理を!という思いで、片付けと合わせてお伝えしています。
終活とは
終活とは、人生最期のときを自分が望むようなかたちで迎えられるように、そして遺される人たちに精神的にも金銭的にも負担をかけずに済むように、元気なうちから準備しておくことです。
準備を進める中で、自分の人生を改めて振り返ることができ、これからの人生をより良くしていくために考えるきっかけにもなります。
「死について考える」と聞くとネガティブな印象を持つ人もいますが、実際には今後の人生をより楽しく、より有益なものにしていくためのポジティブな作業でもあるのです。
自分にとって大切なものに気付き、優先すべきものが分かり、今を笑顔で過ごせるようになる終活。取り組む人が増えているのも納得ではないでしょうか。
終活をやるべき3つの理由
終活にはやるべき理由が3つあります。メリットでもあるので順番にご説明します。
自分にとって大切なものに気付ける
終活に取り組む時間は、同時に今までの人生を振り返る時間になります。
自分はどんなことを優先してきたか、何を大切にしたいのか、やりたくて後回しにしていることはないか、など気付いていなかった自分にとって重要なものが見えてきます。
それが分かれば今後の人生をより充実させるために必要なこと、気を付けるべきことも分かります。
遺される家族や大切な人たちに思いを伝えられる
自分にとって大切な家族や友人、お世話になった方など思いを伝えたい人もいるでしょう。
今まで伝える機会がなかった自分の思いや感謝の気持ちも終活をすることで文字に残すことができます。
トラブルを減らすことができる
自分がいなくなった後、遺された家族は遺産を相続します。金銭的なものや不動産などは誰がどれだけ相続するのかが明確に示されているとトラブルになるのを防ぐことができます。
大切な家族が無駄に傷つけあうことのないように、自分が元気なうちに遺言書を作成すること、そして相続してくれる相手とも一度話し合っておくといいでしょう。
始めるならいつがいい?
終活はいつでも始め時です。
自分が病気になったり、定年を迎えたり、といったきっかけに始める人も多いですが、自然災害や事故、疫病の発生など、死は寿命や病気に関係なく突然訪れることもあるのです。
思い立ったときに始めるのが一番いいといえます。
早めに取り組むほど、様々な選択肢や可能性にも気付き、後の人生を有意義に過ごせるようにもなるでしょう。
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終活で用意するもの、決めておくこと
終活にはいろいろと用意するものや決めておくべきことがあります。
そんな終活の具体的なやり方についてお話ししていきます。
エンディングノートを用意する
エンディングノートが初めて日本で登場したのは1991年。
今ではたくさんの種類のエンディングノートが売られるようになりました。
終活の第一歩目としてノートを用意し、書き込んでいくことから始めましょう。
書き方などについては第5章で詳しくご説明します。
財産の確認・把握
預貯金や不動産など保有している財産のみならず、借入金やローン、保証債務なども把握し、書き記しておきましょう。
・預貯金
・不動産
・生命保険
・各種年金
・株や投資信託
・保証債務
・所有する土地
・有価証券
・借入金、ローン など
遺産相続の配分を決める
保有する財産を誰にどのような配分で相続するかを決めておきましょう。
遺言書を書く
エンディングノートには基本的に法的効力がないので、相続争いなどのトラブルを回避するためには遺言書に財産分与の仕方を記すのがいいでしょう。
遺言書には次の3つの種類があります。
・自筆証書遺言……遺言者が自筆で全てを書き、署名、捺印して作成する
・公正証書遺言……公証人および証人(2名以上)の前で遺言者が口述した内容を公証人が書き記し、各人が署名、捺印して作成する
・秘密証書遺言……遺言者が作成・封印し、その封印された封書に公証人および証人(2名以上)が署名、捺印する
遺言書は決められた形式で作成しないと認められない場合があるのでご注意ください。
お墓を決める
通常お墓を建てるのには2~3カ月かかるといわれていますし、墓石費用や永代使用料、管理費など多くの費用も必要になります。
近年ではマンション型墓地などの選択肢も増えてきました。
遺された家族への負担を減らすためにも考えておくといいですね。
遺影用の写真を撮っておく
スマホの普及で日常的に写真を撮ることが増えたとはいえ、遺影に使えるような写真を撮っている人はあまりいないでしょう。
遺された家族も写真がどこにしまってあるのか分からないといった場合もあります。
そうならないためにも、この機会に遺影用の写真を撮っておきましょう。
葬儀の準備をしておく
一般財団法人日本消費者協会が2017年に調査した「葬儀についてのアンケート」で導き出された結果によると、葬儀にかかる費用は200万円前後なのだそうです。
どんな葬儀にするか、どこの地域で行うかなどによって料金差はあるのですが、一般的に葬儀には多くの費用がかかることが分かります。
こういった葬儀費用を自分で貯めておくことも大切ですが、遺産分割が終わるまでは故人の口座からお金を引き出すことが難しい場合があるのです。
2018年にはこういった問題を少しでも解消できるように民法(相続関係)が改正され、2019年からは家庭裁判所の決定なく最大で150万円までは故人の口座から預金を引き出すことができるようになりました。
しかし、銀行で払い戻ししてもらうための資料を揃えることに時間がかかってしまうこともあります。
こうならないためには予め受取人を決めておく「資産承継信託」を行っておくのがいいでしょう。
エンディングノートの書き方
第4章で少し触れましたが、エンディングノートは終活をする上でとても大切で便利なものです。
自分が死んでしまった後や認知症になってしまったときなど、自分の思いや必要な情報を家族や友人たちに伝えられる手段になります。
とくに「こう書かなければいけない」といった決まりはありませんので、自由に自分の好きな書き方で作ってみましょう。
これから書き方をご説明しますが、あくまでも一例ですので参考としてご覧ください。
書くこと:その1 個人情報
自分自身の生年月日、住所、本籍地、血液型、趣味、特技、好きな食べ物などの基本的な情報に加えて、マイナンバー、運転免許証番号、健康保険証番号などの公的な情報、
スマホやインターネット、クレジットカード、光熱費などの契約情報(支払い方法、契約解除の連絡先、SNSのIDやパスワード、アドレスなど)をまとめておきましょう。
またペットを飼っているなら、ペットの名前、生年月日、性格、好きなフード、フードを与える量や回数、かかりつけの病院、病歴、誰に任せたいか、なども書いておくと良いでしょう。
これらが記載されていることで、万が一のときに家族が必要な情報をすぐに見つけることができます。
書くこと:その2 医療について
アレルギー、持病、常用している薬、かかりつけの病院、臓器提供の意思、延命治療を希望するかなど。
認知症などで自分の判断能力が低下したり、事故などで意識不明の状態になってしまった場合に、周りの人たちが適切な対応をとるための助けになります。
臓器提供や延命治療に関することなどは家族とも事前に話し合っておくほうが良いかもしれません。
書くこと:その3 葬儀について
どんな葬儀を希望するか、誰に喪主を務めてほしいか、誰に参列してほしいか、遺影に使ってほしい写真はどれか、一緒に棺に納めてほしいもの、お墓があればその場所、葬儀費用の用意があるかなど。
とくに参列してほしい人たちの名前や住所などがまとめてあれば、ご家族も焦ることなく対応できて安心ですね。
書くこと:その4 相続について
相続権が発生する財産(預貯金・不動産・土地の権利・有価証券など)、加入している生命保険とその受取人についてなど。
エンディングノートには法的効力はないのでその点には注意してください。
また、借金がある場合はそれも相続財産になります。分かるように記載しておきましょう。
書くこと:その5 遺言について
遺言書は作成方法や記載内容について決まりがあり、これに沿って作成されたものには法的効力があります。
エンディングノートとは別に遺言書を用意している場合にはそのことを書いておきましょう。
書くこと:その6 大切な人たちへの思い
家族や親族、友人、知人、お世話になった方たちとの思い出や伝えたい感謝の気持ちを記しておきましょう。
自分の持ち物で譲りたいものがあれば、誰に何を渡したいのかを書いておくと安心です。
書くことに迷ったら
「何を書けばいいか分からない」という方は市販されているエンディングノートから自分に合うものを選んでみてください。
様々なタイプがあり、いろんな項目が用意されているので書きやすいものが見つかると思います。
書き終えたら
エンディングノートには重要な個人情報がたくさん載っていますので保管には十分に気を付けましょう。
ただし、いざというときに家族が見つけられないと意味がありませんので、信頼できる人にエンディングノートを書いていることを伝えておくようにしておきましょう。
エンディングノートは一度書いたら終わりというものではありません。
定期的に見直してみて、自分の心境や健康面、資産状況の変化など、変わったものがある場合には書き換えるようにしましょう。
一年に一回、例えば自分の誕生日や年始など、見直す日を決めるのもいいかもしれません。
自分の人生を振り返り、たくさんの人に思いを馳せ、感謝できる日になりますね。
まとめ
終活は決してネガティブなものではなく、自分の今までの人生を振り返り、これからの人生をより良く過ごすため、また大切な家族や友人たちへその思いを伝えるためのポジティブなものなのです。
終活はいつ始めても早すぎるということはありません。
むしろ後悔のないように、ぜひこの機会に取り組んでみてください。