近年「終活」という言葉が注目され、40代のうちに準備を始めるべきだと言われていますが、何をすればいいのかわからなかったり、その必要性を感じない方も多いかもしれません。
しかし、終活を始めるのに早すぎることはありません。むしろ、自分自身のことを冷静に判断できる40代だからこそ、計画を立てるのに適した時期です。
この記事では、40代の方が終活で取り組むべきことについて、さらにおひとりさまと家族がいる場合の終活の違いも含めて詳しく解説していきます。
この記事を監修した人
- 小西 清香氏
- 整理収納アドバイザー
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。夫の身内6人の看取りや介護をし、生前整理の大切さを痛感。
また看護師時代ICUに勤務し、人の最期もたくさん見てきました。
そんな経験を元に元気なうちから生前整理を!という思いで、片付けと合わせてお伝えしています。
40代から終活すべき理由とそのメリット
終活というのは、人生の終わりを迎えるその時に後悔しないよう生きるための準備のことです。具体的には、葬儀の方法やお墓の準備、遺言書の作成、そして身辺整理を指します。
こうした言葉が並ぶと、どうしてもネガティブに考えがちですが、実際には終活は、過去を一度振り返って整理し、未来を明るく照らすためのものです。つまり、将来を前向きにとらえるための行為と言えるでしょう。
一度、人生を振り返り改めて未来を見据えることで、やりたかったことや、将来のために今始めるべきことが明確になり、これからの人生をより有意義に過ごすためのきっかけになります。
40代といえば、まだまだ働き盛りの世代。「終活は早すぎる」と感じる方もいるかもしれませんが、実は40代から始めることで得られるメリットは非常に多いのです。
メリット1:老後の不安が少なくなる
40代から終活を行うことで、老後の準備を早くから始められ、将来への不安を減らすことができます。たとえば、次のような選択や決断について事前に備えることが可能です。
・いざというときは誰に頼るべきか?
・施設に入りたいか、またその際の費用は?
・もし認知症や重大な病気になったらどうするのか?
・病気や怪我の際の保険手続きはどうするのか?
これらを事前に考えておけば、判断力が低下する老後に焦ることがなく、安心して生活を送ることができます。また、家族や友人と相談して協力体制を整えておくことで、いざという時のサポートがスムーズになります。さらに、こちらが誰かのサポートをする側になることもできます。
メリット2:人生設計の軌道修正ができる
日本の平均寿命は長いですが、予期せぬ事故や病気で早くに人生を終えることもあります。40代という比較的若い時期から終活を始めることで、やりたいと思って後回しにしていたことや諦めていた夢を再挑戦するきっかけにもなります。
また、子供の自立や親の介護、自身の結婚・離婚など人生の節目に合わせて見直しを行うことで、優先すべきことや大切なものが明確になり、人生設計の修正ができます。
メリット3:整理整頓がはかどる
身辺整理や不用品の処分は、体力や気力、そして判断力が必要です。老後にこれらを行うのは体力的にも精神的にも負担が大きくなりますが、40代であればまだ体力に余裕があり、スムーズに進められるでしょう。
さらに、40代から始めると、ゆっくり時間をかけて計画を進めることができ、焦る必要がありません。
次の章では、具体的に40代で取り組むべき終活の事柄を見ていきましょう。
【40代の終活】エンディングノートを書く
終活の第一歩としておすすめなのが「エンディングノート」を書くことです。
エンディングノートとは自分の人生の終え方や、万が一の際に必要となる情報をまとめて書き記しておくものです。法的効力はありませんが、家族や周囲の人に自分の意思を伝え、困らせないための大切なツールとなります。
エンディングノートに書くべき内容
エンディングノートには、主に次のようなことを書き記すのが一般的です
・不動産や財産に関する情報、希望する処分方法
・銀行口座やクレジットカード情報
・保険、年金、ローンの情報、ID・パスワードの管理方法
・SNSやデジタルデータの管理(削除、アカウント閉鎖など)
・葬儀やお墓に関する希望
・緊急時に連絡してほしい人々の連絡先
・自分の人生の振り返りや、大切な人へのメッセージ
これらの情報は、亡くなった後の手続きをスムーズに進めるためにも重要です。特に、パスワードやアカウント情報、資産管理に関する内容は、家族にとって非常に助けになるでしょう。
書き始めるコツ
エンディングノートに記載する項目は多岐にわたるため、初めて取り組む際には、すべてを一度に書き終えようとすると負担に感じることがあります。まずは、自分が今書ける部分から始め、後から少しずつ書き足していくことが大切です。
例えば、自分の振り返りや、大切な人へのメッセージを書くことで、徐々に筆が進むかもしれません。身近な人や友人・知人に普段言えない思いを書くことで、改めて自分の本当の気持ちに気が付くこともありで、自然と自分の心の整理にもつながります。
また、定期的に内容を見直し、更新していくことも重要です。生活環境や人間関係は常に変化するため、年に一度、自分の誕生日や年末年始など、節目の時期にノートを見返す習慣をつけておくと良いでしょう。
エンディングノート専用のノートは市販されていますが、特定の形式に縛られる必要はありません。普通のノートや手紙、さらにはパソコンを用いたデジタル方式でも問題なく作成できます。形式よりも、自分や家族にとって使いやすく、わかりやすい方法で書くことが大切です。
エンディングノートを保管する際の注意点
エンディングノートに記載される情報の中には、プライバシーにかかわるものや重要な情報が含まれます。そのため、保管場所には注意が必要です。家族がアクセスできる安全な場所に保管するか、信頼できる友人や家族に保管場所を伝えておくことが大切です。デジタル形式で書く場合は、パスワード保護を施すなどの対策も考えましょう。
エンディングノートのメリット
エンディングノートを書くことで、自分の未来に向き合い、これからの人生をどう生きたいかを考える良い機会になります。40代のうちにこうした準備を始めることで、老後に向けての計画が明確になり、不安を軽減することができます。また、家族や大切な人に対しても、自分の意思をはっきりと示すことができ、余計な心配をかけずに済むのも大きなメリットです。
エンディングノートは、終活の中でも手軽に始められる準備のひとつです。まずは無理なく、一歩ずつ進めていきましょう。
エンディングノートについてはこちらの記事でも詳しく紹介しています!
【40代の終活】身辺整理をする
40代はまだ体力に余裕があるため、将来を見据えた身辺整理を始めるのに最適な時期です。早めに身辺整理を進めておけば、今後どのような暮らしをしていくかを考える良い機会になりますし、万が一の際には遺族の遺品整理の負担を軽減することもできます。
また、身辺整理によって部屋がすっきり片付き、快適な住空間を手に入れることもできるでしょう。
以下のポイントに沿って整理を進めてみてください。
①不用品の処分
まずは、必要なものと不要なものを分け、不用品を処分しましょう。リサイクルや人に譲るのも良い方法です。不用品を減らすコツは、少しでも迷ったものは思い切って処分することです。最小限の持ち物で生活に慣れておくことで、将来も快適に過ごせます。整理整頓は一度で終わらせるのではなく、衣替えや大掃除の際など、定期的に行うことが大切です。
ただし、大切な思い出が詰まったものや、一瞬でも捨てることに迷うものは、無理に処分する必要はありません。特に再発行が難しい書類や非売品のグッズ、骨董品などの貴重品は慎重に整理しましょう。
②財産の整理
使っていない銀行口座やクレジットカードは、この機会に解約しておくと良いでしょう。また、投資信託や不動産の資産をまとめ、ローンや負債の状況も明確にしておくことが大切です。価値のある骨董品や貴金属がある場合、それらのリストも整理しておくと、家族にとって役立つでしょう。
③デジタルデータの整理
「デジタル遺品」という言葉があるように、現代では、デジタル機器やインターネット上に残るデジタルデータも整理しておく必要があります。
アカウントやインターネットショッピングのアカウントなど、本人しか管理できない情報は特に重要です。整理したいデータやアカウントは、削除や解約を行っておきましょう。家族に残しておきたい写真や動画はクラウドストレージやDVDにまとめ、その存在を家族に伝えておくことも大切です。
また、遺影用の写真も自分で選んでおくと、家族が困ることなく準備できます。整理する際には、登録しているアプリやサービスの解約方法もまとめておくと良いでしょう。
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【40代の終活】両親と一緒に終活をする
自分自身の終活をきっかけに、終活世代の両親と一緒に話し合ってみてはいかがでしょうか。終活という言葉に対して「縁起が悪い」と感じ、話題にあげることができない人もいるかもしれません。しかし、終活は死後の準備だけでなく、今後の生活をより良くするために行うものでもあります。
まずは、これまでの人生を振り返る話から始めてみると良いかもしれません。それをきっかけに両親と一緒に終活を進めてみてください。
①一緒にエンディングノートを書く
ご自身が40代で、70代、80代の両親がいる場合、自分よりも両親のことのほうが心配になる年代だと思います。両親と一緒にエンディングノートを書くことで、自分のことも想像しやすくなり、将来についても考えるきっかけになります。一緒に話をしながら書き進めることで、互いの希望や考えを共有でき、普段触れにづらい話題も聞けるようになるでしょう。
②お葬式やお墓について話し合う
お葬式やお墓のことは、早めに話しておきたい重要な話題です。できるだけ本人の希望を叶えてあげたいことでもありますから、話ができるときに聞いておきましょう。
ただし、藪から棒にセンシティブな話を切り出すと驚かせてしまう可能性があるので、慎重に、両親の気持ちを尊重しながら話を進めることが大切です。なかなか難しいとは思いますが、自分の生前整理の経験や整理をして気付いたことを話しながら、自然な流れで終活の話題に移るとスムーズに話が進むことがあります。
お葬式に関しては、家族だけで行う家族葬にするのか、友人や知人を呼ぶ一般的なお葬式にするのか、具体的な希望を聞いておきましょう。また、誰に連絡をするべきか、相談相手にしてほしい人は誰なのかなども確認しておくと安心です。
お墓については、今のお墓を継承するのか、それとも墓じまいをするのか、話し合っておくことが大切です。また、お墓の管理費や管理方法についても早めに決めておくことで、今後の生活設計をより明確にすることができます。
ただ、こういった話をすると、特に母親の場合、「お父さんと一緒のお墓は嫌!」とか「姑と同じお墓なんて絶対に嫌!無縁仏にしてほしい」など、感情的な反応をすることも珍しくありません。実際、筆者の母親もまさにこのパターンでした。感情論で話が進まなくなることもありますが、そんなときは冷静に、現実的な問題を話すのが効果的です。例えば、「子どもたちに迷惑がかかる」とはっきり伝えることで、状況を理解してもらえます。
筆者の場合、「これ以上迷惑がかかるようなことはやめて」と毅然とした態度で話し、過去の家族の出来事を振り返りながら会話を進めました。「あの時はこうだったよね」「こんなこともあったよね」と話を広げ、母親のわがままを封じ込めることができました。時にはユーモアを交えつつ、冷静に話し合うことで、難しい話題も前向きに進められるのではないでしょうか。
このように、感情的なやり取りになりがちな終活の話も、現実を踏まえた冷静な対応で進めていくことが重要です。
③実家の整理と相続について
両親が亡くなった後、実家をどうするかも重要なテーマです。住み続けるのか、売却するのかを早めに決めておくことで、今後のライフプランや資金計画も立てやすくなります。相続に関しても、事前に家族で話し合っておくことでトラブルを避け、スムーズに進めることができるでしょう。
おひとりさまの終活はどうするべき?
終活を進める際には、”おひとりさま”になる可能性も考えておくことが大切です。特に40代からは、健康や両親の他界といった予測しにくいリスクに備えておくことが、後々の安心につながります。
①人間関係の再構築を考える
まずは、今の人間関係を今一度見直してみましょう。頼れる人がいるかどうかで、終活の内容や方法が変わります。もし頼れる人がいれば、その人にしっかりと相談しておくと安心です。もしも頼れる人がいなければ、下記のような生前契約を検討するのも一つの手段です。
・死後事務委任業契約:本人の死亡後に葬儀や各種手続きを代わりに行ってくれるサービス
・生前事務委任契約:生活のサポートや、入院時や施設入居時の身元保証人を務めてくれる
・任意後見契約:認知症など判断能力が低下した場合、あらかじめ契約した範囲内で本人の法律行為を代行してくれる
具体的にどのサービスが自分に合うか、今のうちに調べておき、準備を進めることが大切です。また、自分の死後に不要になった家財の処分方法や遺品の譲渡、ペットの引き取り手についても考えておきましょう。
こういった準備は一人で行うと負担に感じるかもしれませんが、専門家や信頼できる人に相談することで、気持ちが軽くなることもあります。
②入院や介護が必要になったときのことを考える
突然の病気や事故で入院や介護が必要になった際のことも考慮しておきましょう。特に身元保証人が必要な場合、頼れる人やサービスを事前に見つけておくことが大切です。地域の行政サービスや、介護保険を利用したサポート体制を確認するのも良いでしょう。また、医療保険や生命保険の内容を見直し、必要に応じて保険をアップデートしておくことで、より安心して老後を迎えることができます。
身元保証人がいないことによる
病院・施設の困りごと
・緊急時に対応が遅れる可能性がある
・入院や介護計画、ケアプラン等に関すること
・入院・入所中に必要な物品の準備に関すること
・入院費・入所費に関すること
・退院や退所後のサポート不足
・死亡時の遺体や遺品の引き取り等に関すること
・医療行為の同意取得が困難
身元保証人がいない場合、
医療や介護の現場で様々な問題を引き起こす可能性があるんだ。
だからほとんどの
医療機関・介護施設が
身元保証人を求めているのね。
③資産を見直す
定期的な資産の見直しは、将来の不安を軽減する重要なステップです。まずは老後に必要な生活費を計算し、働ける年数や今後の収入見込みを把握しておきましょう。これにより、自分にどのくらいの貯蓄や資産形成が必要なのかが見えてきます。
加えて、不動産や株式、家財道具、貴金属など、売却可能な資産もリストアップしておくと、万が一の際に役立ちます。資産の全体像が把握できれば、今後の生活設計も立てやすくなります。
また、遺言書の作成も検討しましょう。遺言書には、財産分与だけでなく、葬儀の希望やペットの世話など、個人の希望を明確に記載できます。遺言内容を実行する遺言執行者を決めておくと、手続きがスムーズに進みます。
④老後の生活に備える
老後は、収入が減るため、お金に関するセーフティネットの確認が大切です。生活支援サービスや介護施設の情報は定期的にインターネットやパンフレットで調べ、最新情報をアップデートしておくと安心です。気づきにくいサポート制度が存在することもあるため、福祉課や役所にも相談してみると良いでしょう。
また、近所の人とのコミュニケーションを大切にすることも、ひとり暮らしには有効です。挨拶を交わすだけでも十分な繋がりとなり、緊急時には助け合いができるかもしれません。さらに、地域の福祉サービスに登録しておくことで、安心感が得られることもあります。
このようにして、少しずつでも準備を進めておくことで、おひとりさまの終活もより安心して行うことができます。気になることや不安な点は、周囲の人や専門家に相談しながら、一つひとつ整理していきましょう。
おひとりさまと家族がいる場合の終活の違い
終活を考える際、特に重要なのは「おひとりさま」と「家族がいる場合」の違いです。それぞれの状況によって、進め方や注意点が異なるため、しっかりと理解しておきましょう。
相談相手の有無
おひとりさまの場合
相談できる相手がいないため、自分自身で判断し、準備を進める必要があります。信頼できる友人や専門家に相談することが重要です。また、万が一の時のために生前契約などを活用し、身元保証人や葬儀の手配をする必要があります。
家族がいる場合
家族と相談しながら進めることができるため、コミュニケーションを大切にすることが重要です。家族がいることで、終活を進める際の負担が軽減されますが、意見の対立や感情的な問題が発生することもあります。
財産の整理と相続
おひとりさまの場合
自分の財産や資産を整理する必要がありますが、相続人がいない場合は遺言書を作成することで、希望を明確にしておくことが重要です。遺品整理や不用品の処分方法も事前に計画しておくと安心です。
家族がいる場合
財産の分配や相続に関する話し合いが必要になります。誰がどの財産を相続するのか、遺言書を作成する際は家族の意見を取り入れつつ、トラブルを避けるための配慮が求められます。
サポート体制の違い
おひとりさまの場合
万が一の入院や介護が必要になった際、身元保証人を確保することが難しいため、あらかじめサービスを調べ、契約しておく必要があります。信頼できる第三者やサービスを見つけておくことが大切です。
家族がいる場合
家族がサポートしてくれることが期待できますが、実際には負担がかかることもあります。介護や入院時には、家族間で役割分担を明確にし、必要なサポートをし合うことが重要です。
コミュニケーションの重要性
おひとりさまの場合
自分自身の意思を明確にし、他者に伝えることが難しいため、エンディングノートを活用して、自分の希望や気持ちを整理することが効果的です。自分の気持ちを表に出すことが大切です。
家族がいる場合
家族とのコミュニケーションを通じて、終活についての理解を深め、意見を共有することが重要です。定期的に話し合いの場を設けることで、相互理解が進み、スムーズな終活が可能になります。
このように、おひとりさまと家族がいる場合では、終活に対するアプローチや考慮すべき点が異なります。自分自身の状況を見つめ直し、どのように進めるべきかを理解することが大切です。それぞれの状況に応じた適切な準備を行い、安心して未来に備えましょう。
まとめ
40代での終活は、親や子供のための終活だけでなく、自分のためでもあります。まずは前向きに気持ちを切り替えて、できることから始めてみてはいかがでしょうか。また、独身だからこその終活の必要性もおわかりいただけたと思います。何事も準備をしっかりとしておくに越したことはありません。
この記事で皆様の疑問が少しでも解消され、終活に興味を持っていただけたら幸いです。
今回はメリットや意義にフォーカスしましたが、より詳しい終活の進め方を知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。