「終活」という言葉が一般的になってきた昨今、若くから生前整理を始める人も増えてきました。
40代は人生のちょうど折り返し地点、加えて両親は正に終活世代という生前整理をするにはぴったりのタイミングです。
今回は生前整理を「早くから始めるメリット」と「具体的なやり方」についてご紹介いたします。
この記事を監修した人
- 小西 清香氏
- 整理収納アドバイザー
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。夫の身内6人の看取りや介護をし、生前整理の大切さを痛感。
また看護師時代ICUに勤務し、人の最期もたくさん見てきました。
そんな経験を元に元気なうちから生前整理を!という思いで、片付けと合わせてお伝えしています。
生前整理って何?
「生前整理」とは、元気なうちに自分の財産や持ち物を整理しておくことです。
自分の死後、遺族が扱いや処理に困らないように、また自分自身を改めて見つめ直し、本当に大切なものを見極め、人生の後半をより有意義に過ごすために再設計するためのものでもあります。
ひと昔前までは「死ぬための準備」のように誤解され敬遠されていましたが、近年では自分の人生を後悔なく全うするため、そして自分にとって大切な人たちのため、ということが理解され取り組む人が増えてきました。
誰もが必ず人生の終焉を迎えます。
しかし、疫病の流行や災害などもある中、その時がいつ訪れるかは誰にも分かりませんし、高齢になってから終活に取り組むのでは体力的にも気力的にも難しくなっているでしょう。
これからの時代は誰もが若いうちから「生前整理」に取り組むことがスタンダードになっていくのではないでしょうか。
「40代から」早く始めるメリットとは
2020年7月に発表された厚生労働省のまとめによると、2019年の日本人の平均寿命は男性で81.41歳、女性で87.45歳となっています。
つまり40代というのはちょうど人生の折り返し地点にあたるのです。
さらに、人生設計を見直すのにも良いタイミングだといえます。
子育てがひと段落してきたり、親の介護が必要になったり、自分自身の体調に変化が出てきたりなど、今までの生活から変化が生まれやすいのもこの年代です。
ここでは生前整理を早く始めるメリットを5つお伝えします。
1:体力も気力もある状態で取り組める
生前整理では身の回りの品を必要なものと不必要なものとに仕分けして処分したり、財産を整理して誰に相続するかを考えたりするなど、体力や気力を要することが多いのです。
年齢が上がると体力が落ちていき、重たいものを持ち上げることが難しくなるのはもちろん、客観的な判断力、決断力が低下していくことも考えられます。
その点、40代ならまだまだ体力的にも十分であり、客観的で適切な判断もできるのではないでしょうか。
2:今後の生き方を見直せる
生前整理をすることで今までの人生の振り返りにもなります。
その中で変わらず大切なもの、予定と変わってきてしまったこと、やりたいと思いながら後回しにしていることなどが細かく見えてきます。
今後の人生を後悔なく生きていくために自分が優先すべきものや手放すべきものが分かり、将来設計の軌道修正をすることができるのです。
3:老後に備えられる
老後にどのように過ごしたいかを考えるのにも良い機会です。
独身の場合はもしものときに頼れる人を明確にしておく必要がありますし、既婚者でも配偶者とどのような生活を望むのか、子供家族との同居を希望するのか、施設に入るなら手続きをどうするか、介護が必要になった場合にはどうするかなど、将来起こり得る問題を周りの人達と話合い、事前に準備しておくべきであることが分かります。
自分一人で決めていても、いざというときの相手の状況もあるので今のうちから話し合う習慣を作っておくのはとても良いことです。
4:両親の終活も同じ目線で話し合える
自分の両親が終活世代だとしても、こちらからその話題を振るのは気が引けるという人は多いのではないでしょうか。
自分自身が生前整理を行うことで「今、終活を始めていてね」と話題にもしやすくなります。
実は両親も「相続のことなどを相談したいと思っていて話すきっかけが欲しかった」のだという事例もよく耳にします。
これがきっかけで今よりもなんでも話せるより良い関係が作れるかもしれませんね。
5:共有しておくべき情報を認識できる
マイナンバー、運転免許証番号、健康保険証番号などの公的な情報、スマホやインターネット、クレジットカード、光熱費などの契約情報(支払い方法、契約解除の連絡先、SNSのIDやパスワード、アドレスなど)、持病があればどこの病院にかかっているかなど、いざというときに分からなければ困る情報は意外とたくさんあります。
整理をするのに時間がかかるこれらの情報を、余裕を持ってまとめておくことで、気持ち的に安心感も生まれます。
生前整理のやり方①『所有物の整理』
「生前整理」で整理するものは大きく分けて3つあります。
まずはその内のひとつ「所有物の整理」についてお話しします。
40代になる頃には身の回りの荷物が増えて、処理していない不用品も多くなっている人がほとんどではないでしょうか。
不用品を分別、整理、処分するのは時間と手間と根気が必要です。
時間をかけて取り組める40代のうちに始めましょう。
身辺整理
生前整理することで今後の人生に必要なものが明確になりますし、もし自分がいなくなっても遺族に掛ける遺品整理の負担を軽くすることができます。
身辺整理にはコツがあります。
以下を参考に自分に合ったやり方を見つけましょう。
一度に取り組む量を決める
「今日はこのタンスを整理しよう」「ここからここまでは来週にしよう」など
1回で全てを整理しようとはせず、範囲を決めて取り組みましょう。
期間を決める
「3カ月後までに」「〇月末までに」など、いつまでに終わらせるという期日を余裕を持って決めましょう。
ジャンル毎に取り組む
「衣類」「本・書類」「小物類」などジャンル毎に整理していきましょう。
基準を決めて始めましょう
判断に迷うことも出てくるので、例えば「服は2年以上着ていないものは捨てる」など、自分なりの判断基準を予め決めておきましょう。
「捨てるもの」「譲るもの」「寄付するもの」「売るもの」「残すもの」に分ける
使っていないし、使う予定がないものは「捨てるもの」。
価値がある、誰かにあげたいものは「譲るもの」。
自分では使わないが、誰かの役に立ちそうなものは「寄付するもの」「売るもの」。
現在も使っているし、これからも使うものは「残すもの」。
このように分けて整理することで自分がその品物に感じている愛着度が分かります。
人に譲りたいものは、すぐに渡せるものであればもう譲り、自分の死後に渡したいのであれば事前に相手にそのことを伝えておきましょう。
身辺整理する中でどうしても決められずに迷うものもあると思います。
それらは1カ所にまとめておいて、半年に1回など定期的に見直すようにしましょう。
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生前整理のやり方②『心の整理』
「生前整理」の2つ目は「心の整理」です。
写真や動画・思い出のもの
家族のフォトアルバムや子供が描いた絵や作文など思い出深いものは、手に取るとつい、じっくりと見てそのときのことを考えてしまい時間がかかってしまうことも多いので、整理をする際には「ものの整理」が終わってから手を付ける方が良いでしょう。
そしてデータ化して保存することが可能なものならぜひそうしましょう。
写真や絵はデータ化することで色褪せることなく残すこともできますし、かさばることもありません。
大切な人へのメッセージ
生前整理に取り組む中で、自分にとって大切な人に「伝えたいこと」「言っておかないといけないこと」があることに気付くでしょう。
「手紙に書く」「会って話す」「エンディングノートに書き記す」などあなたの言葉を大切な人に届けられるようにしましょう。
人生の後半でやりたいこと・未来の人生設計
生前整理をすることで「叶えたかった夢」や「やりたかったこと」「後回しにしていること」を思い出すことがあります。
またもっと他に新たな夢が生まれるかもしれません。
40代は人生の折り返し地点、これからの人生をより有意義なものにするために改めて未来の人生設計をし直しましょう。
生前整理のやり方③『情報の整理』
「生前整理」の3つ目は「情報の整理」です。
相続・財産について
相続権が発生する財産(預貯金・不動産・土地の権利・有価証券など)、加入している生命保険とその受取人についてなども見直して整理し、相続してもらう人には予め話しておきましょう。
また、借金がある場合はそれも相続財産になります。
分かるようにエンディングノートなどに記載しておきましょう。
デジタル情報
相続や遺品整理で近年問題になっていることのひとつに「デジタル遺品」があります。
デジタル遺品とはスマートフォンやパソコンなどのデジタル機器やインターネット上に保存されているデータや情報、SNSや購入サイトの契約などです。
データや情報は適切に削除しないと簡単に復元できてしまうこともありますし、SNSなどの解約にはメールアドレス、ID、パスワードが必要な場合もあります。
データや情報の消去は信頼できる人に依頼しておきましょう。
SNSなどのIDやパスワードは一覧にまとめ、生前には他の人に知られないように保管し、死後には処分してくれる人に伝わるようにしておきましょう。
エンディングノート
最近は市販されているエンディングノートの種類も豊富になりました。
記入項目の種類もたくさんあるので自分に合ったものを選ぶと良いでしょう。
もちろん普通の白紙のノートを使っても良いのですが、記載しておきたい項目が多くなるので書き忘れなどを防ぐなら、すでに項目が記載されている市販のエンディングノートを使うのが便利です。
特に4章の「心の整理」5章の「情報の整理」の内容はエンディングノートに記載しておくことをおすすめします。
また、せっかくエンディングノートを書いていても自分の老後や死後に家族に見てもらうことがなければ意味がありません。
自分がエンディングノートを書いて保管していることは家族や信頼できる人に伝えておきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回のコラムで生前整理を40代から始めることが決して早くはない、むしろ始めるのにはベストのタイミングだということがお分かりいただけたかと思います。
自分のこれからの人生をより豊かなものにするために、そして大切な人への負担を減らし安心して過ごすためにも、早速この機会に「生前整理」を始めましょう。