「終活」という言葉を聞いたことはありますでしょうか?
「終活」とは「人生の終わりを考えることで今をよりよく生きる活動」のことです。
人生を充実させる活動として脚光を浴び、2012年に当時の流行語にも選ばれました。
ただ、言葉を聞いたことはあっても「何のためにするのか、何をすればいいのかは知らない」という方は多いのではないでしょうか?終活の目的や行うべきことを知れば、恐れてしまいがちな「死」を前向きに捉え、残りの人生を充実して過ごすことができます。
今回はそんな「終活」の全容を紐解いていきましょう!
この記事を監修した人
- 小西 清香氏
- 整理収納アドバイザー
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。夫の身内6人の看取りや介護をし、生前整理の大切さを痛感。
また看護師時代ICUに勤務し、人の最期もたくさん見てきました。
そんな経験を元に元気なうちから生前整理を!という思いで、片付けと合わせてお伝えしています。
終活の目的
終活の目的は「人生の終わりを意識し今を充実して生きること」です。
死は誰にでも必ず訪れますが、それがいつ・どのようにやって来るかは誰にも分かりません。ただ、死の直前になり「もっとあのようにするべきだった」「まだやり残したことがあった」と後悔したくはないですよね。
だからこそ自分なりの生き方を設計し、できることから一つずつ準備・実践していくことが大切なのです。
また、終活を行う目的で多いのは「突然自分が亡くなったときに家族を困らせないようにすること」です。実際に「家族に迷惑を掛けないようにするため」や「病気や介護が必要になったときに備える」という意見は多いです。共に人生を過ごす家族や周囲の方々のことも考えながら生き方を設計すると、より鮮明に終活の目的をイメージしやすくなるかもしれません。
終活のメリット
では、終活をすれば、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
主なメリットは3つあります。
家族への負担が軽減する
終活をする最大のメリットは、残された家族への負担が軽くなることです。
もしご自身が亡くなれば、「お葬式やお墓をどうするか」「私物の処分はどのように行うのか」などやるべきことは山積みです。また、死亡届の提出など公的・法的な手続きもしなければなりません。いずれも煩雑な作業なため、ご家族がゆっくり故人との思い出や悲しみに浸る余裕はありません。また、扶養していたお子様や配偶者の今後を考えておらず、金銭的に困窮する恐れもあります。
こうした理由から、所有物を手放したり、貴重品の保管場所を整理整頓したりして、生きているうちに身辺整理を全て済ませておくと、家族の負担を軽減することができます。
遺族間のトラブルを回避できる
遺族で故人の遺品整理をするときに最も多発するのが「遺産相続のトラブル」です。
故人が残した財産をめぐり、仲の良かった遺族が法廷で争う事案が近年増加しています。自身の死がきっかけでこうしたトラブルが起こるのは悲しいことですし、できるだけ避けたいものです。
終活では「遺言書」という法的な書類を作成し、自身の遺産をどのように相続したいかを明確にしておくことで、遺産相続のトラブルを未然に防げます。遺言書は形式が決まっているため、書き損じを減らすためにも、所有している財産や土地を洗い出してから作成するのがおすすめです。
余生への漠然とした不安が無くなる
終活は、自分自身の人生を見つめなおし、これから先の人生をどう生きていきたいかを鮮明にイメージできるきっかけになります。
普段何気なく生きていると残された人生に対して漠然とした不安を感じることがありますが、具体的に何をするのか真剣に考える方は少ないです。例えば、突然大病を患ったときにどうしたいか、老後の過ごし方・必要な資金、人生で後悔していることなど、世代や環境によって様々です。そうした不安をノートに書き出せば、ご自身の悩みや今後の方向性が明確になり、充実した余生を過ごす準備ができます。
終活のデメリット
気持ちが暗くなる
終活は、普段深く考えないような自身の「死」や死後の状況について真剣に向き合う活動になるため、強烈な不安や孤独感に襲われる方もいらっしゃいます。
できれば想像したくないことをあえて考えるというのは、それなりにストレスがかかります。
また、終活では自身が所有する財産や収支に関する情報を整理するため、理想のライフプランに対する金銭的余裕がないことが鮮明となり、絶望することもあります。
現在のお金の使い方を見直すきっかけになりますが、もしお一人で不安になるようでしたら、ご家族や終活アドバイザーへの相談を通してネガティブな気持ちを払拭しましょう。人に相談したり、気持ちを落ち着かせたりすると、理想のライフプランの実現に近づくためのアイデアを創出することができます。
悪徳商法や詐欺に巻き込まれる
近年、終活される方を狙った詐欺が増加しています。生前に納得して契約したはずのお葬式なのに、契約内容と実際の内容が全く異なっていたり、保有資産を不当な金額で買取したりするなど、その手口は実に巧妙です。
他にも終活キャンペーンなどと謳い、お墓や貴金属を売りつけるような手法もあります。費用の一部を隠して安く提示している場合もありますので、契約前に必ず合計金額を精査したり、ご家族など第三者にも確認してもらったりして予防しましょう。
家族間で揉め事が起きる
身辺整理に相続や遺言に関するトラブルはつきものです。それを未然に防ぐのが遺言書です。「今はまだその時期じゃないから書かない」と先延ばしにする方もいらっしゃいますが、それは危険です。
遺言を残さずに亡くなれば、残された家族が財産の取り分を巡って裁判で争う恐れがあるからです。
遺言書は法的な効力をもち、書き方も統一されているため、相続が必要な場合は必ず作成しましょう。
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終活でやること
エンディングノートを作成する
エンディングノートは、いわば「終活のメモ帳」です。
法的な効力はありませんが、エンディングノートに終活で取り決めたことや個人情報を書き留めておけば、遺族を安心させ、自身も人生について余裕をもって考えて終末期を迎えることができるのです。エンディングノートの書き方には決まった形式がないため、紙製のノートやパソコンのドキュメントファイルなど、ご自身の書きやすい方法で自由に記入してみましょう。
エンディングノートには、以下の情報をなるべく具体的に記載しておきましょう。
・個人情報:生年月日、住所、血液型、趣味、人柄、宗派、延命治療についての考え、ペットのことなど
・葬祭関係:葬儀の進め方、理想のお墓、希望の遺影、遺言
不用品の整理を行う
不用品の整理は必ず生前に行いましょう。もし不用品を一切整理せずに亡くなった場合、遺族が悲しみに暮れる暇もなく全て行うことになります。不用品の整理はなるべく遺族の方々と一緒に行いましょう。基本的なやり方は、今後の人生に本当に必要な物かどうかを基準に仕分け、不要な物を手放すだけです。必要な物だけに囲まれた生活は、より充実した人生をもたらしてくれます。
また不用品を整理していると、自分でも知らなかった品物が見つかるようなことがあり、物によっては遺族間の揉め事に発展する可能性があります。
そういう場合はエンディングノートに財産目録を作成して、誰に何をどれくらい所有してもらうのかを明記しておくのもおすすめです。
個人情報を整理する
個人情報には、先ほど述べた「生年月日」「住所」「血液型」のほかに「金融情報」があります。
銀行口座、クレジットカード情報、生命保険、株やFXの取引情報など、金融資産にまつわる情報は全てリストアップすれば、遺産をご遺族に確実に譲渡し、第三者への漏洩を防ぐことができます。
スマートフォンやパソコンなどの精密機器に保存した個人情報も全て整理しましょう。電話帳や住所録のアプリ、メッセージの受信・送信ボックスの整理はもちろん、SNSや登録している各種サービスなどで不要なものは退会しておきましょう。
終活をいつ始めるべきか?
終活には「このタイミングで始めてください」といった明確なルールはありません。
したがって、いつから始めても構いませんが、「なるべく早めに」あるいは「思い立ったとき」に始めるのがおすすめです。
いつ死ぬか分からないという点でも、終活に興味を持ち始めた比較的モチベーションの高いタイミングでスタートしてみましょう。
・定年を迎えたとき(親、または自分)
・親に終活を勧めたいと考えたとき
・身近な人が亡くなったとき
・健康面に不安を感じたとき
・相続のことを意識し始めたとき
このように人生の節目となるタイミングで終活を始める方も多くいらっしゃいます。ひとつの目安として参考にしてみてください。
まとめ
終活は、自身の残りの人生を充実させるだけでなく、遺族の今後の人生を明るくするためのハウツーです。
「人生の終焉に向けた準備」や「死を意識するもの」としてネガティブな印象を抱きがちですが、今をよりよく生きることにつながる前向きな活動であると当記事でご理解いただければ幸いです。
ぜひ、身辺整理をしてこれまでの人生を振り返り、より実りのある余生をお過ごしください。