近年、「孤立死」や「孤独死」という言葉を耳にすることが増えています。
この問題に対処するため、2024年4月1日に「孤独・孤立対策推進法」が施行されました。
この法律はすべての世代を対象としており、社会全体での取り組みが加速されることが期待されています。
日本では高齢化や貧困が原因で、誰にも気づかれずに亡くなり、数日から数か月発見されないケースが増加しています。
孤立死・孤独死の問題は深刻な社会問題であり、他人事ではありません。
この問題を考えるときには、まず、孤立死(社会から孤立し亡くなる)と孤独死(家族や友人がいない状況で亡くなる)の違いを理解することが大切です。
定期的な連絡や訪問、地域コミュニティや福祉サービスの利用を促すことで、大切な人を孤立死や孤独死から守りましょう。
この記事を監修した人
- 小西 清香氏
- 整理収納アドバイザー
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。夫の身内6人の看取りや介護をし、生前整理の大切さを痛感。
また看護師時代ICUに勤務し、人の最期もたくさん見てきました。
そんな経験を元に元気なうちから生前整理を!という思いで、片付けと合わせてお伝えしています。
孤立死と孤独死の違い
孤立死と孤独死はどちらとも「誰にも看取られず一人で亡くなること」を指していますが、実はその意味には違いがあります。
この違いを理解することで、適切な対策を講じることができます。
では、どのように使い分けるべきなのか、詳しく見ていきましょう。
孤立死
孤立死とは、家族や近隣住民との関わりが希薄で、社会から孤立した状態で誰にも看取られることなく亡くなることを指します。
この現象は独居高齢者に多いと思われがちですが、実際には若年層の孤立死も増加しています。
例えば、SNSの普及により、対面での会話よりもインターネット上でのつながりやゲームを通じた交流が主流となっています。
このため、いざ助けが必要になったときには、誰にも頼ることができず、孤立死に至ることがあるのです。
また、年々増加している未婚率も、孤立死の一因として挙げられます。
未婚のまま高齢になると、家族という支えがなくなり、孤立しやすくなることがあります。
孤独死
孤独死とは、何かの原因で亡くなる際に誰にも看取られずに亡くなることを指します。
孤独死の場合、家族や親族、近隣住民とある程度の交流はあったものの、亡くなる際にはひとりの状態であったことが特徴です。
例えば、家族や親族が遠方に住んでいて頻繁に会えなかったり、近隣住民とは挨拶程度の顔見知りで、深い交流がなかったりする状況が考えられます。
このような場合、普段はそれなりに社会的なつながりがあっても、突然の死に際しては誰も気づかず、結果として孤独死に至るのです。
孤独死は、特に持病を抱えている人や、急な体調変化に対応できない高齢者に多く見られます。
高齢者の孤立死が増え続ける原因
高齢者の孤立死が増え続ける原因はいくつか考えられます。
以下に主要な要因を挙げます。
家族構造の変化
核家族化
日本では核家族化が進んでおり、子供や孫と同居する高齢者が減少しています。
昔は三世代同居が一般的でしたが、現在では夫婦のみや単身世帯が増加しています。
これにより、高齢者が日常生活で直面する問題に対する支援が受けにくくなり、緊急時の助けを得ることが困難になっています。
少子高齢化
少子化により若い世代の人数が減っているため、高齢者を支える家族の手が足りなくなっています。
特に一人っ子世帯では、子供が親の世話をする負担が大きくなりすぎることが多く、結果として高齢者が独居を選ぶケースが増えています。
地域社会の変化
近所付き合いの希薄化
都市部を中心に、近所付き合いが薄れており、高齢者が地域コミュニティに参加する機会が減少しています。
昔ながらの近所同士の助け合いや見守りの文化が失われつつあり、高齢者が孤立しやすい環境が生まれています。
移動の制約
高齢者が自分で外出することが難しくなり、地域活動への参加が減少しています。
公共交通機関の利用が難しい地域では特に、移動手段が限られているため、高齢者が外出を控える傾向が強まり、結果として社会からの孤立が進みます。
経済的要因
年金や貯蓄の不足
経済的に困窮している高齢者は、必要なサポートやサービスを利用することが困難です。
年金だけでは生活費を賄えない場合、医療や介護サービスの削減を余儀なくされることがあります。
医療・介護費用の増加
医療や介護の費用が増加しているため、必要なケアを受けられない高齢者が増えています。
特に低所得の高齢者にとって、これらの費用は大きな負担となり、適切なケアを受けられない状況が生じています。
心理的要因
孤独感と疎外感
高齢者は家族や友人と離れて暮らすことにより、孤独感や疎外感を感じやすくなります。
社会とのつながりが薄れると、心理的な負担が増し、健康にも悪影響を及ぼします。
メンタルヘルスの問題
孤独感や疎外感が長期間続くと、うつ病などのメンタルヘルスの問題が起こりやすくなります。
これが悪化すると、さらに社会から孤立し、孤独死のリスクが高まります。
制度的要因
サポート体制の不足
地域や行政による高齢者支援の体制が不十分な場合、孤立する高齢者を支援することが難しくなります。
特に地方では、行政の手が届きにくい場所も多く、高齢者支援の取り組みが遅れがちです。
情報の不足
高齢者やその家族が利用可能な支援サービスについての情報が不足していると、必要な支援を受けられないことがあります。
適切な情報提供がないと、高齢者は利用可能なサービスを把握できず、孤立してしまうことがあります。
これらの要因が複合的に作用して、高齢者の孤立死が増加していると考えられます。
この問題を解決するためには、社会全体で高齢者支援の取り組みを強化し、孤立を防ぐための施策が必要です。
具体的には、コミュニティの再構築、経済的支援の拡充、心理的サポートの提供、そして行政の支援体制の強化が求められます。
高齢者人口の増加 ‐現状と将来の予測‐
2023年に内閣府が発表したデータによると、日本の総人口1億2,495万人のうち、65歳以上の高齢者は3,624万人で、総人口の29%に相当します(参考1)。
2020年には738万人だった独居高齢者は、2040年には1,041万人、2050年には1,084万人に達すると予測されています。
さらに、2050年には15歳以上の総人口が9,428万人となる中で、65歳以上の高齢者は3,890万人に上り、高齢者の約3人に1人が独居高齢者となる見込みです(参考2)。
(参考1)内閣府『令和5年版高齢社会白書』第1章 高齢化の状況
(参考2)国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』(令和6(2024)年推計)
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孤立死を予防する方法
大切な人を孤立死から守る方法はいくつかあります。
見守りサービスを利用する
地域コミュニティにおける見守りサービスの充実は、高齢者が安心して自宅で生活を続けるための重要な要素です。
地域住民がお互いに支え合い、定期的に近況を確認し合うことで、異変や問題を早期に察知し、適切な支援を受けることが可能になります。
また、ガスや電気の事業者、郵便局なども見守りサービスを提供しており、訪問時に生活状況を確認し、必要に応じて関係機関と連携して迅速な対応を行います。
さらに、ボランティアや民生委員が定期的に訪問し、高齢者とのコミュニケーションを深めることで、孤立感を軽減し、精神的なサポートを提供します。
高齢者住宅へ入居する
有料老人ホームや介護付き高齢者向け住宅では、専門の介護スタッフが24時間体制で高齢者の健康と安全を支えています。
入居者は安全で快適な環境で自立した生活を送り、日常生活の援助や健康管理などあらゆる面で支援を受けることができます。
施設内では、さまざまな社会活動や趣味活動が提供され、入居者同士が交流する機会も多く設けられています。
集団でのレクレーションや外部からの文化活動が提供され、人々との交流や趣味活動を通じて、新たな関係を築くことで孤独感を軽減する効果が期待されています。
高齢者住宅は、高齢者が心身ともに豊かな生活を送るための重要な場です。
社会参加の機会を増やす
高齢者の孤立を防ぎ、生活の質を向上させるためには、社会参加と経済的自立が重要です。
地域の行事やボランティア活動への参加は、新たな友人や支援者との出会いをもたらし、社会とのつながりを強化します。
これにより、地域社会に貢献する喜びと心の充実感を得ることができます。
また、高齢者でも就業意欲があり、働ける人も多くいます。
企業や団体は高齢者の雇用を積極的に推進し、ハローワークなどの公的機関も再就職支援を行っています。
筆者は、高齢者の経験や知識を活かしながら、共に支え合う社会を築くことが非常に大事だと思います。
こうした取り組みによって、高齢者は心身ともに健康で充実した生活を送ることができるのではないでしょうか。
孤立死や孤独死に直面したらどうする?
親族や近隣住民の孤立死や孤独死を発見した場合、どのような行動を取ればいいでしょうか。
状況を確認する
部屋に異変を感じた場合、まずは部屋を開けて確認します。
明らかに死亡が確認できる状況
腐敗臭や大量の害虫が発生しているなど、死亡が明らかな兆候がある場合は、その場に立ち入らずに直ちに警察に連絡してください。
このような状況では、すでに死亡している可能性が非常に高くなります。
病死や事故死ではなく、事件の可能性もあるため決して現場に踏み入れず、直ち警察に通報しましょう。
また、腐敗臭がする状況は、遺体の腐敗が進行していることを示しています。
免疫力の低下した遺体からはウイルスが発生し、健康リスクを引き起こす可能性があります。
二次被害拡大を防ぐためにも、現場への立ち入りは避けてください。
死亡しているかわからない状況
死亡がはっきりしない場合、意識がない状態や出血が見られる場合は、救急車を呼びます。
この場合も現場のものや身体には触れず、生存確認は救急隊に任せるようにしましょう。
立ち入りを禁止して現場を保護する
警察や救急隊が適切な処置を行うために、現場には立ち入らず、状況を変えないようにします。
現場に立ち入らずに状況を保持することで、証拠や物証が保全され、事件の真相究明に役立ちます。
特に腐敗臭や害虫が発生している場合は、健康リスクが高まる可能性があるため、立ち入りを控えることが安全面でも重要です。
警察や救急隊が到着するまで、周囲の人々が立ち入りを避けることで、二次被害を最小限に抑えることができます。
このような慎重な対応は、被害者や関係者のプライバシーを尊重し、捜査活動が円滑に進むためにも必要不可欠です。
家族や関係者への連絡
家を訪れた際に、自分の身内や知り合いが孤立死や孤独死で亡くなっていた場合、家族や関係者への連絡は、慎重に行う必要があります。
警察や救急隊が対応を進める中で、事態を早急に報告することが重要です。
迅速な連絡により、必要な支援や手続きを円滑に進めることができます。
孤立死や孤独死の報告は家族や関係者にとって非常にショッキングな出来事です。
このような知らせを伝える際には、特に細心の注意を払い、できる限り配慮を持って伝えることが大切です。
感情的なサポートや必要な情報提供を行い、家族や関係者が安心して適切なサポートを受けられるように努めましょう。
これらの手順に従うことで、適切な対応が行えます。
孤立死や孤独死は、迅速な行動と冷静な判断が求められる事態ですが、基本的な情報や対応策をあらかじめ理解しておくことが重要です。
また、賃貸住宅にお住まいの方が亡くなった場合、遺品整理や残置物の片付けを急いで行う必要があります。
遺品整理の専門業者も全国に存在しますので、わからないことがあれば相談すると良いでしょう。
まとめ
孤立死と孤独死はどちらとも「誰にも看取られずひとりで亡くなっていること」を指した言葉です。
しかしこの2つの言葉には少し違いがあります。
・孤立死
家族や近隣住民との関わりがなく、社会から孤立した状態で誰にも看取られず亡くなること
・孤独死
家族や近隣住民と日頃の交流はあるものの、何らかの原因で誰にも看取られず亡くなること
孤立死を防ぐために同じ地域に住む人々や民生委員など、ボランティアでの見守りを充実させる必要があります。
また高齢者の社会参加も非常に大きな予防策となります。