人一人の所有物の数は一万個ともいわれており、遺品整理では数多くの品物が見つかります。遺品整理ではその数の遺品を仕分け、形見分けや処分など遺品をどのように取り扱うかを決めていく必要があります。
そんな時、遺品として遺された衣服の整理は非常に困難なものです。なぜなら遺された衣服は、故人様との思い出を呼び起こしやすいので簡単に処分できない上、サイズや好みが合わなければ実用的ではない「使えないが捨てられない」といった矛盾を持つ品物だからです。
今回はそんな遺品整理における衣服の処理方法を紹介します。
この記事を監修した人
- 小西 清香氏
- 整理収納アドバイザー
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。夫の身内6人の看取りや介護をし、生前整理の大切さを痛感。
また看護師時代ICUに勤務し、人の最期もたくさん見てきました。
そんな経験を元に元気なうちから生前整理を!という思いで、片付けと合わせてお伝えしています。
取り掛かる前に
まず、遺品整理で衣服を発見したらすぐに整理を始めてはいけません。整理をする前に確認しておくことがあります。
遺言書に指示はないか
遺言書やエンディングノートなどに故人様の衣服への意向が記されている場合があります。「この衣服は息子に譲りたい」などの意見があれば、その衣服を探し出し、引き継げるよう手配しましょう。また、処分方法などのアドバイスが記載されている場合もあります。
親族と話し合う
どの遺品もそうですが、事前にどのように処理するべきか親族間で話し合うことは重要です。「この衣服を受け継ぐ約束をしていた」などの話が出てくるかもしれません。また、親族の中には「形見分けとして私に欲しい」などの意向もあるので、整理を始める前に親族の意向も確認しておきましょう。
貴重品の存在
衣服のポケットの中から貴重品が見つかる場合もあります。遺産を親族間で正確に分けるためにも、事前に衣服をざっと確認しておくと、仕分け中に重要な貴重品が見つかり、相続を考え直すといったことが防げます。
衣服の整理でトラブルになることはまれではありますが、故人様と親族の意向を事前に把握することは重要です。気持ちよく整理が進められるよう、必ず確認しましょう。
タイミング
では次に、衣服を遺品整理するタイミングを紹介します。
賃貸かどうか
故人様の家が賃貸であった場合は、衣服などの遺品を放置しておくと家賃がかかります。家賃がかからないようにするためには、ある程度整理または別の場所に移動しておく必要があります。つまり、早急に行う必要がある場合も存在します。
親族が集まってから
特に急ぎの用事がなければ、第1章で説明した、遺言書の確認や親族の意向を把握した後が最適です。親族全員で作業を進められるため、素早く済ませられます。また、処分に困った品を見つけても、解決案を出しあうことができます。
心の整理ができてから
衣服は故人様を思い出させやすい遺品の一つです。もし、故人様への心の整理がついていないとその思いがあふれ、整理できなくなってしまう場合もあります。賃貸の場合であれば早急に片付けなくてはなりませんが、特に急ぎの事情がなく、心の整理ができていない場合は、落ち着いてから始めましょう。
仕分け
次は衣服の仕分け方法を紹介します。
衣服を仕分けるポイントは3つの基準で分類を行うことです。
それは
・必要な物
・保留する物
・捨てる物
の3つに分類することです。
必要な物
故人様の意向がある衣服や形見分けの予定がある衣服などがここに当てはまります。また、皮のコートなど必要ないが売却できそうなものも、ここに当てはまります。
保留する物
処分に悩んでしまう衣服はすべてここに当てはまります。仕分けの段階で悩んでいると整理に膨大な時間がかかってしまうので、必要ではないが、捨てられないものはすべてここに当てはまります。とにかく少しでも悩んだらここに入れましょう。
捨てる物
下着や劣化している衣服は売ることもできず、引き継ぐ方もいないでしょう。そのような衣服がここに当てはまります。また、見るからに誰も使わないであろう特徴的な衣服もここに当てはまります。
またこの仕分けの段階で、ポケットの再確認を行いましょう。故人様の性格にもよりますが、小銭は頻繁に見つかるものです。必ず確認しましょう。
プログレスは全国の
エリアで展開中!
現状対応できない地域も一部ございます。
詳しくはお問い合わせください。
保留した衣服はどうする
では、次に保留した衣服の処理方法を紹介します。
いくつか方法があります。
再利用(リユース)する
基本的に衣服は大きな汚れや穴などがない限りは再利用できます。再利用すれば、誰かに使用してもらえるため、処分にはなりません。
再利用の方法はリサイクルショップに持ち込み、売却する方法や、フリマアプリなどに出品する方法があります。また、売却ができれば少しではありますが、買取金が発生します。賢く売りたい方は一着一着売りに出すのではなく、まとめて出すことがおすすめです。まとめて出品することで、一着では価値が出せないものでも売却できることがあります。
さらに、金額がつかない衣服の引き取りも請け負うリサイクルショップも存在します。
「価値がないから再利用はできない」と考える前に、まずは試してみましょう。
寄付をする
世界には衣服がなく困っている方が数多くいます。そのような方へ寄付もできます。冬服は対象外など寄付できる衣服に規定はありますが、誰かのために、なおかつ世界に貢献できるという理由で利用される方は数多くいるようです。
リメイクする
服の一部を切り取り、巾着などの小物に変えることをリメイクと言います。和服や着物など、着ることはないが捨てがたい衣服は、この処理方法が最適です。新たな小物に変えて身近に置けば、故人様といつまでもそばにいられます。
供養する
リメイクなどもできず寄付もできないが、故人様が大切にしていた捨てがたい衣服は供養しましょう。お寺などのお焚き上げで供養してもらえます。
画像に残す
衣服が捨てられない理由が、「思い出があるから」という理由だけである場合は、この画像に残す方法もおすすめです。画像に残せば、衣服の思い出をデータとして残すことができ、使わない衣服を所持せずに、いつまでも手元に残しておけます。
このように保留した衣服は、一番良い方法を見つけ、処理していきましょう。また、遺品整理業者に依頼すれば、再利用、寄付、リメイク、供養などの手続きも進めてくれます。もし、遺品整理業者に依頼している場合はサービスを行っていないか確認してみましょう。
あまりにも量が多い時は
これで、衣服の整理方法は終わりですが、故人様が大量の衣服を所持しており、仕分けですら簡単に進まないことがあります。
そのため、最後に遺品整理する衣服が多い場合の対処法を紹介します。
遺品整理業者
遺品整理業者に依頼すれば、遺品の仕分けや処理に長けたスタッフが迅速に作業を進めてくれます。そして、遺品一つひとつに整理方法の指示を出すことができるため、寄付、処分、売却など自由に選択できます。また、貴重品の捜索なども承っているため、衣服のポケットなどの確認も不要です。丁寧かつ一つひとつ確認してくれるので、大切なものが服にまぎれていても安心です。
リサイクルショップ
リサイクルショップは先の章で説明した売却対応が主流となるのですが、訪問での買取を承っている業者もあります。訪問であれば、大量の服を店まで持って行く必要はありません。
また、まとめての依頼であれば、捨てる物(処分する衣服)を回収してくれる業者もあります。つまり、残す物以外の衣服をすべて処理できます。
まとめ
衣服は人を表す重要な役目を持つ品物であり、故人様を思い出しやすいものです。そのため、素早く進めることも大切ですが、精神的につらくなった際は一度間を置きましょう。無理して進めると、「本当は残すべきだった衣服を捨ててしまう」など取り返しのつかないことが起きるかもしれません。大切な故人様をいつでも気持ちよく思い出せる遺品整理にしましょう。
今回の記事で少しでも遺品整理の知識が深まりましたら幸いです。お読みいただきありがとうございました。