生前整理という言葉をご存じでしょうか?この言葉は終活という概念とともに、死ぬ前に行う作業の一つとして少しずつ広まっています。しかし自分にはまだ早いと感じたり、いざ始めようと思っても何をすれば良いのかわからずに手を付けないままという方も多いのではないでしょうか。
当コラムでは、生前整理の世代別メリットやいつから始めればいいかを解説します。
この記事を監修した人
- 小西 清香氏
- 整理収納アドバイザー
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。夫の身内6人の看取りや介護をし、生前整理の大切さを痛感。
また看護師時代ICUに勤務し、人の最期もたくさん見てきました。
そんな経験を元に元気なうちから生前整理を!という思いで、片付けと合わせてお伝えしています。
生前整理の主な目的と整理のコツ
まず始めに生前整理の意図を説明します。生前整理は、ご自身が生きている間に身の回りを整理することで、ご自身が亡くなった後ご家族や親族に負担をかけないようにするための作業です。人が亡くなった後はご家族や親族が遺品整理を行いますが、生前整理が済んでいると遺品整理の負担は大幅に軽減されます。つまりご自身の手でご家族や親族の負担を減らすことができるのです。
また、整理と聞くと物を処分する大掃除のようなイメージがありますが、生前整理で整理するのは物だけではありません。所有している財産を洗い出す必要があります。なぜなら、金銭が関わることは相続に直結するからです。トラブルにも発展しやすいため、ご自身が元気な内にトラブルの種を解消しておきましょう。
生前整理が必要な理由
・家族の負担を減らすため
・老後を穏やかに過ごすため
・人生を見つめ直すため
・相続や遺産、節約について意識するため
生前整理では、いつから始める場合でも主に以下の4つのことを行います。
・不用品の仕分けと処分
・エンディングノートの作成
・財産目録の作成
・住みやすい空間づくり
生前整理は持ち物や財産を整理することに加えて、人生を見つめ直す機会でもあります。時間がかかる作業なので、一気に進めずに数カ月~1年程かけて少しずつ進めましょう。
生前整理のコツ
生前整理は、自分が亡くなった後のことをイメージして取り組むのがコツです。「自分がいなくなったらどうなるだろう」「こんなにたくさんの荷物を家族に処分してもらうのは大変だ」という視点を持つと整理しやすいかもしれません。
例えば、大切にしている物を手放す場合はゴミとして処分せずに、価値が分かる人や必要な人に使ってほしいと思いませんか?そうした考えで持ち物を整理していけば仕分けが随分捗ります。
使う予定がない物はリサイクルに出したり、誰かに譲渡したりすれば、整理自体がとても有意義なものになります。亡くなるまで手元に置いておきたい物は死後の取り扱い方をエンディングノートに書き記しておけば、残された家族や親族も困りません。
物が多すぎたり、整理方法に悩んだりして思うように生前整理が進まない場合は、整理収納アドバイザーや遺品整理・生前整理をサポートしてくれる専門業者に、財産整理のことなら法律の専門家に相談するという選択肢もあります。
プロに相談すると悩みがあっさり解決することもあるので、迷ったら専門家を頼るのもおすすめです。
いつから始めるのがベスト?
生前整理はいつから始めても問題ありません。とはいえ、いつから始めても良いと言われると余計に悩んでしまいますよね。この章では生前整理を始めやすいタイミングをご紹介しますので、参考になさってください。
退職した時
定年を迎えるなど退職をきっかけに生前整理を始めることで、じっくりと進められます。「これまで」のご自身と向き合い「これから」を考えてみましょう。また、お仕事一筋だった方の場合、退職後は何をすれば良いかわからず燃え尽き症候群になる方もいらっしゃいますので、新たなやりがいとして生前整理を行うのも良いでしょう。
子育てが落ち着いた時
お子様が成人されたり、ご結婚や進学で実家を出たりするタイミングも生前整理を始める良いきっかけになります。自由な時間が大幅に増えるため、ご自身の人生と向き合いながらじっくりと進められるでしょう。
将来が不安になった時
例えば親しい方の死や入院の知らせを受けたり、災害のニュースを見たりして突然の不幸やハプニングを目の当たりにすると、死を身近に感じたり不安になったりするものです。このような「もしも」に備えて生前整理を始める方もいらっしゃいます。
上記はほんの一例ですが、生前整理をいつから始めるか悩まれている方は、人生の節目や大きな出来事をきっかけに始めてみてはいかがでしょうか。しかし最初にも申し上げた通り生前整理はいつから始めても良いので、ご自身の気持ちと相談してタイミングを見つけてください。
若い世代で始める方も
生前整理はいつから始めても良いですが、最近は20代、30代といった若い世代で始める方も増えているのはご存知でしょうか。この章では若い世代の方がいつどのようなきっかけで生前整理を始めるのかやメリットなどを解説します。
【20代・30代】生前整理を始めるきっかけやメリット
・万が一の時に安心したい
今健康だったとしても事故や病気で生活はがらりと変わります。命を落としたり、一命を取り留めたとしても寝たきり状態や会話が困難になったりする可能性があります。そんな「もしも」に備えて生前整理をしておくとご自身の意思や情報を残せるため、ご家族の安心につながります。
・ご自身の未来を考えられる
生前整理を始めると人生と向き合うことになるので、今後の目標やどう生きるかを改めて考える機会ができます。結婚や昇進など人生に変化が多い世代ですので、ご自身やご友人の人生に変化があったタイミングが生前整理を始めるきっかけになることもあります。
やっておきたいこと
1.エンディングノートを作成する
エンディングノートは終活ノートとも呼ばれ、残される方のためにご自身の情報や葬儀の希望などを書けるツールです。法的拘束力は持ちませんが、残された方に意思を伝える有効な手段です。形式は決まっていないため、ノートや文書作成ソフトなど、ご自身の書きやすい媒体で書き進めましょう。若い方はネット上のサービスで使用するアカウントとパスワードの備忘録として使うのも便利です。個人情報を記載するものですので、厳重に保管してください。
2.デジタル遺品に該当するものを整理
若い世代の方は、高齢の方と比べるとデジタル製品を使う場面が多いです。ネット銀行口座や電子マネー、SNSアカウント、端末内の写真など利用状況によっては整理する必要があります。また、端末に保存されている写真やムービーもHDD(ハードディスク)に移動させたり似たような写真は思い切って削除したりして整理します。
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生前整理を意識する世代
続いて、生前整理を意識し始める40代、50代、60代の生前整理を始めるきっかけやメリットについて解説します。この世代は人生の過ごし方について考える機会が増える世代ですので、生前整理のボリューム世代とも言えます。
【40代・50代・60代】生前整理を始めるきっかけやメリット
・自由な時間ができた
この世代は2章でご紹介した「生前整理を始めやすいタイミング」を迎える方が多くいらっしゃいます。まだまだ体力も判断力も元気な世代だからこそ、老後のことや今後の過ごし方をはっきりさせられるのが最大のメリットです。例えば、やり残した趣味を実践して人生を充実させたり、老人ホームへの入居を考えているなら入居に向けて準備を進めたりするなど、明確な行動ができます。
・ケガのリスクを避けられる
高齢になると室内で過ごすだけでも様々なリスクが生じます。例えば、段差や何もない場所で躓きやすくなり転倒してしまったり、立つことが困難になり高い場所に置いている物が取れなくなったりするなど、体が正常に動く時には思いつかないようなリスクがあります。体が自由に動く間に生前整理の一環として家の中を安全に住めるようにしてリスクを回避しましょう。
やっておきたいこと
1.資産の整理・保険の見直し
投資を行っていたり、不動産・動産を複数所有している方も多いでしょう。もし株式や証券取引のために複数の口座を作っている場合は一つにまとめたり、不要な口座を解約しましょう。不動産・動産は相続トラブルになりやすいため、処分や売却をする前にご家族に相談しましょう。繊細な美術品などは管理方法をエンディングノートなどにまとめておくと安心です。
保険はライフステージに合わせて見直すことが推奨されています。プランを見直すことで無駄な出費を減らせ、その分これからの人生にお金が使えます。
2.やりたいことリストを作る
どんな方にもやり残したことはあるはずです。やりたいこと(挑戦したいこと)や、会いたい人、行きたい場所などを書き出してみましょう。新しいことを始めたり、会いたかった人と再会したりすると心も人生も満たされるはずです。
このように若い世代の方と生前整理のきっかけやメリットは少し異なりますが、いずれにせよ自身の人生や生活を充実させることにつながります。
生前整理で気をつけたいこと
生前整理はいつから始めるにしても共通した注意点があります。
エンディングノートは定期的に更新する
エンディングノートは書いたら終わりではありません。資産や置かれている状況、考えも時が進めば変化します。定期的に更新し、情報を新しくしておきましょう。
相続については家族や親族に相談する
生前整理はご自身で行う整理なので、周囲に相談することを忘れがちですが、特に遺産相続に関わることは必ずご家族や親族の方と相談するようにしましょう。ご自身が生きている今だからこそ、相続人にあたる方と直接話して納得のできる相続の下地を作っておきましょう。
大切な物を捨てない
生前整理は本当に必要な物を残す整理です。思い切って物を処分できるのは良いことですが、必要な物まで捨ててしまうこともあります。また、ご自身にとっては不要でもご家族から「必要だった」と言われることもありますので、思い出の品などを整理する際は親しい方と相談しながら行うのがおすすめです。
死を意識しすぎない
生前整理はご自身が亡くなった後に残される方のために行うという大きな目的があります。ですので、死を身近に感じすぎてしまい、気分が落ち込んでしまうこともあります。そんな時は無理して整理を進めず少し休みましょう。
まとめ
生前整理は残された方の負担を減らすという目的がありますが、ご自身の人生を豊かにする作業であることもおわかりいただけたと思います。
そろそろ生前整理をしようかな、と考えている方の参考になりますと幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。