大切な方の遺品を「ずっと手元に置いておきたい」「片付けたいけれど見るのも辛い」となかなか捨てられずにいる人もおられるでしょう。
亡くなった人のものは絶対に捨てなければいけないわけではありません。
しかし、ずっと手元に置いておくのも実は大変なのです。
当コラムでは、亡くなった人のものを捨てるべき理由を解説し、捨てられない原因とその対策、自分にあった遺品の手放し方などをご紹介します。
この記事を監修した人
- 小西 清香氏
- 整理収納アドバイザー
元汚部屋出身の整理収納アドバイザー。夫の身内6人の看取りや介護をし、生前整理の大切さを痛感。
また看護師時代ICUに勤務し、人の最期もたくさん見てきました。
そんな経験を元に元気なうちから生前整理を!という思いで、片付けと合わせてお伝えしています。
亡くなった人のものを捨てるべき5つの理由
遺族の心の整理
遺品を仕分ける際、故人との思い出や悲しい思いと自然に向き合うことになります。
個人差はありますが次第に悲しみを受け入れられるようになり心の整理ができます。
スペースを有効活用
亡くなった人のものを処分すれば空いたスペースを有効活用できます。
遺品の管理をする必要がなくなる
放置しているとホコリをかぶり傷んできますし、カビが発生することも。
これらが原因で健康被害が出る、怪我をするなどのリスクがあります。
管理の手間や家族の健康を考えるなら捨てるほうが良いでしょう。
相続トラブル防止
資産価値がある遺品を見落としていて、それが遺産分配後に発覚した場合、相続人間でのトラブルに発展する恐れも。
相続トラブルを防ぐためにも、不要なものを捨て、貴重品や必要な品を取り分けておくことが重要です。
火災や犯罪被害を防ぐ
空き家は放火犯に狙われやすいうえ、不審者による不法侵入や空き巣被害といったリスクが高まります。
故人宅が空き家になるなら早めの遺品整理が望ましいです。
亡くなった人のものを整理し処分することは、決して悪いことではありません。
故人との思い出は、たとえものが無くなったとしても心の中にずっと在り続けるはずです。
形あるものはいつしか劣化し、いずれ誰かの手で処分されます。
それなら、親しい間柄の方が懐かしみながら遺品整理を行ってくれる方が、亡くなった人は喜ばれるのではないでしょうか。
亡くなった人のものが捨てられない原因とその対処法
捨てられない原因
・心が追い付かない
深い悲しみにより遺品の処分はおろか、何も手につかない無気力な状態になることも。
・罪悪感を感じる
よく着ていた服など亡くなった人を思い起こすものは特に罪悪感を感じやすいようです。
・もったいない
まだ使用できる物を捨てることに抵抗がある人も。
・捨て方がわからない
品目や自治体によってもルールが異なるうえ、自治体回収の対象外の品もあるため捨て方に迷ってしまうようです。
・時間的・物理的な問題
忙しくて時間がない、整理する家が遠方にあるなど、時間的・物理的な問題も。
・体力や人手が足りない
整理を行う人手が足りない、体力に不安があるケースでも処分が後回しになる傾向に。
捨てられないときの対処法
・無理をしない
心が悲しみに沈み何も手が付かない状態なら、気持ちが落ち着くまで時間を置きましょう。
・手放し方を変える
遺品を手放す方法は「捨てる」だけでなく、リサイクル、売却、寄付などもあるので、自分に合った方法を選んでください。
・第三者のサポートを受ける
自分だけでは難しいと感じる時は第三者(親族、専門家など)を頼りましょう。
基本的な処分までの流れと遺品の手放し方5つ
亡くなった人のものを処分するまでの流れ
1遺品の仕分け
遺品を「必要な物」「不用品」「保留する物」に仕分けます。
必要な物とは、資産価値のある物や今後も使用する品、思い出深く手元に残したい品(形見)などです。
2遺産相続
遺品整理の際に見つかった遺産(借金などの負の遺産も含める)は、遺言書などにしたがって相続人に受け継がれます。
3形見分け
“金銭的な価値はないけれど思い入れのあるもの”は形見として扱われ、親族や親しい人に形見分けされます。
形見分けについて詳しく知りたい方は下記のコラムをご参照ください。
*関連コラム
勝手な形見分けはトラブルの原因に!遺品整理や相続でも注意しよう
4不用品の処分
不用品は各自治体のルールに則って処分します。
調べてもわからない時は市に直接電話して聞くと教えてくれます。
遺品の手放し方
捨てることに比べて、精神的負担が少ない手放し方を5つご紹介します。
データ化する
写真や手紙、ビデオテープなど、かさ張るけれど捨てられないものも、データ化してパソコンに取り込むことで収納場所に悩むことなく半永久的に保存可能に。
クラウドやアプリを使用すれば、親族間でデータをシェアすることもできて便利です。
供養
ぬいぐるみや人形、仏壇、神棚などは供養して手放すのがおすすめです。
檀家寺や氏神神社へ相談、遺品供養を行うお寺・神社を探す、または遺品供養業者や遺品整理業者へ依頼を。
売却
不用品買取業者やリサイクルショップでの査定買取、フリマアプリを使用して売却するなどの方法です。
必要としてくれる人の元で大切に使い続けてもらえると思えば、手放す際の罪悪感も薄れるのではないでしょうか。
*フリマアプリを使用する場合、遺品であることを事前に伝えていないと後々トラブルになることもあるので要注意。
また、発送の手配や梱包、売れるまでの保管・管理もしなければならず、手間や時間が掛かることを心得ましょう。
寄付
学校や施設、NPO団体などに寄付する方法。
寄付できる品や寄付方法はそれぞれ異なりますので、事前に問い合わせて確認しましょう。
リサイクル
衣類や紙類、金属類などは資源としてリサイクルが可能。
自治体の資源回収日を調べてリサイクルに出しましょう。
プログレスは全国の
エリアで展開中!
現状対応できない地域も一部ございます。
詳しくはお問い合わせください。
捨ててはいけないものリスト
遺品の中には捨ててはいけないものもあります。
捨ててはいけないものとその理由を以下にまとめていますのでご確認ください。
捨ててはいけないもの |
理由 |
遺言書 |
故人の遺志確認、相続に必要 |
エンディングノート |
故人の思いを知るため(葬儀や形見分けの希望など) |
現金、通帳、印鑑、証券、保険証券など |
遺産相続で必要 |
マイナンバー通知カード、健康保険証、パスポートなどの身分証明書
|
健康保険証やパスポートは返却必須 マイナンバー通知カードは死亡届けを提出すれば失効されるため返却義務はないが、相続手続きで使用する可能性がある |
契約書関係、支払通知書 |
故人が生前契約していたサービスの解約・変更などの手続きに必要 |
仕事関係の書類 |
一定期間保管、会社からの要請があれば返却 |
デジタル遺品 |
スマートフォンやパソコン上で暗号資産やネット証券、ネットバンクを使用していることも IDやパスワードが保存されている場合もあるため要確認 |
鍵 |
どこの鍵か不明なものでも一旦保管(銀行の貸金庫、レンタル倉庫などの可能性も) |
思い出の品、形見品 |
無用な揉め事を起こさないためにも、勝手に処分せず相続人間で話し合って決める |
売却できる可能性があるもの |
相続対象になる可能性もあるので注意(美術品や骨董品、玩具類などは資産価値が高いことも) |
誤って処分することがないように、遺品の仕分け時にはこのリストをぜひご活用ください。
それでも難しいときは専門家に相談
核家族化や少子高齢化も進み、共働き世帯も増加、親戚が近くにいないという人も増えているため、遺族一人にかかる遺品整理の負担も大きくなっています。
*厚生労働省「我が国の人口について」より引用
*厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書~令和時代の社会保障と働き方を考える~」本文掲載図表より引用
こういった背景もあり、遺品整理サービスを利用する人は年々増加しています。
亡くなった人のものを捨てた方が良いとわかっていても、どうしても捨てられないと悩んでいるなら、遺品整理業者への依頼がおすすめです。
遺品整理業者は遺族の心に寄り添いながら迅速に遺品を仕分け、不用品を引き取ってくれます。
さらに以下のようなサービスを実施していることも多く、スムーズな整理が実現できます。
・コレクションなどを買い取り、リサイクルや寄付に出してくれる
・貴重品や探し物の捜索をしてくれる
・立ち会いなしの作業なら何度も通わなくて良い
・お焚き上げ供養や読経の手配をしてくれる
・相続の相談に乗ってくれる
このように遺品整理に付随した作業も任せられるので、滞っていた作業が早ければ数時間で終わることも。
故人宅が賃貸である場合など、時間的制限がある方にもうってつけです。
ただし、遺品整理業者の中には悪徳業者も紛れています。
業者選びでは、遺品整理士が在籍しているか、求めるサービスに対応しているかなどを確認しましょう。
*関連コラム
人気の遺品整理業者の特徴とは?しっかり見極めて良い業者に依頼!
まとめ
遺族の心の整理、遺産相続、遺品の管理など、様々な面から考えて、亡くなった人のものは手放すほうが良いことがおわかりいただけたと思います。
実際に筆者は祖父の遺品整理を行った経験がありますが、その時に寂しい気持ちと向きあえたおかげで、今も後悔なく過ごせているように思います。
現在、自宅には祖父が使っていたものはほとんど残っていません。
それでも祖父が使っていた部屋や愛読書を見れば、いつでも祖父との楽しい思い出が鮮やかによみがえり心をあたたかくしてくれます。
亡くなった人も、遺族には自分の遺品に煩わされず、少しでも早く笑顔になってもらいたいと思っておられるのではないでしょうか。
このコラムをきっかけに、亡くなった人のものと向き合ってみようと思ってもらえたら嬉しいです。